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国の名前

 料理も食べ尽くされ、宴会もそろそろ終わりという雰囲気になってきた。


 国民たちには、とりあえずわらの住居をひとりひとりに与えている。本格的な建物が完成するまでは、申し訳ないがそこで寝泊まりしてもらうことにしたのだ。


 最初は「人間」と「モンスター」の住居を区画ごとに分けようと思っていた。だがそれでは《共存》という趣旨から外れてしまうため、種族関係なく住処すみかを割り当てたのである。


「ねみー」

「また明日なー」

 国民たちが挨拶もそこそこに、それぞれの家へ帰っていく。そこに種族間の隔たりは一切なかった。昨日までは敵対していた種族間が、たった一日でわかり合えるとは、さしものシュンにも予想外であったが。


 シュンはおもむろに立ち上がると、ひとりでサラダをぱくついているロニンに話しかけた。


「なあ」

「あ……お兄ちゃん」

「これからなんか予定あるか」

「ないよ」

「なら俺んとこ来いよ。話がある」

「いまから……?」


 ロニンが頬を真っ赤に染めた。もう夜更けだ。こんな時間から話ってなんだろう……といろいろ妄想を広げてしまう。


「うん。……わかった」

 シュンはこくりと頷くと、先に家に帰っていった。その後ろ姿を、ロニンはドキドキしながら見守るのであった。




「……おじゃまします」

「おう」


 深夜。

 高鳴る胸を意識しながら、ロニンはシュンの住居を訪ねた。本当はすぐにでも来たかったが、簡単に心の準備ができなかった。それだけ緊張していた。


「まあ、座れよ」

「うん……」


 促されるままに、ロニンはシュンの隣に腰を下ろす。ちなみに地面にも一面、藁が敷かれている。

 長い長い沈黙。

 シュンが珍しく黙りこくっている。

 虫の切なげな鳴き声だけが周囲に響きわたっている。

 穏やかな風のせせらぎが、やけに大きく聞こえる。


「国の名前だけどな」

 開口一番、シュンはそう言った。

「シュロン国……って考えてるんだが……どうだ」

「シュロン……」


 ロニンはその国の名前を反芻はんすうした。

 シュロン。

 鈍いロニンでもわかる。

 シュンとロニン。

 その二つの名を掛け合わせたのだ。


「俺とおまえがいなきゃ成立しなかった国だからな。どうだ」

「うん……いいと思う。すごく」

 ーーそれだけ彼が私のことを考えてくれた証だから。

 そう思うと、なんだか恥ずかしくなってしまうロニンだった。


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