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いらない男

「さて、いつまでもこんな所にいるのもなんだ。早速、新しい国に向かおうぜ」


 馬鹿馬鹿しい痴話喧嘩を脇に押しのけ、シュンは新国民たちに問いかけた。騎士もモンスターも、相当疲れているだろうから。


「で、でもお兄ちゃん、その国ってどこにあるの? いまからみんなで行くのは大変じゃない?」

「ばーか。俺とおまえがいるだろが」

「え……?」

「《ワープ》を使うんだっての。おまえ、もう出来るようになってんだろ?」

「で、できるけど……」


 自信なさげに呟きながら、ロニンは眉を八の字にした。

 スキル《ワープ》。

 多くのMPを代償に、指定した場所に一瞬で転移できる。残念ながらどこでも行き放題ではなく、一度行った場所にしか転移できないが。

 望み努力すれば、この《ワープ》は他人ごと転移することが可能だ。


 だが、さすがにここまでの大人数を運ぶことなどできるのだろうか。それを問うてみると、

「できるさ、たぶんな」

 などと無責任なことを言う。

「まあできなかったらそんときだ。別の方法を考えようぜ」

「むう……」


 ロニンは唇を尖らせた。釈然としないが、それしか方法がないのも事実。新天地まで徒歩で向かうのも絶対に嫌である。

 ロニンが頷くと、シュンは片手をあげ、魔法を使用としたーー


 のだが。


「待て……ッ!」

 辺り一帯に、鋭い声が響きわたった。


 シュンが目を向けると、やっと身体を動かせるようになったのか、剣を杖代わりにしている勇者アルスの姿があった。


「なんだでけェ声だして。おまえも来いよ。歓迎するぜ?」

「愚か者が……! 誰がそんなものに行くか!」


 アルスはそこで騎士たちを見渡し、悲痛に叫んだ。


「貴様らどうかしてしまったのか! 生まれ故郷をなげうってまで、なぜそんな得体の知れない国に行こうとする!」

「アルス!」

 叫び返したのはセレスティアだった。

「私たちだってまだ完全に信用できたわけじゃない! もしなにかあったら、すぐに帰ーー」

「皇女様までいったいどうしてしまったのですか! モンスターとの争いはどうなってしまったんです!」

「アルス、私は……!」

「俺はこんなもの認めない! 認めてなるものか!」


 セレスティアの口上など聞く耳を持たず、アルスは森林のなかへ取って返していった。彼を追う人間はひとりもいなかった。


「お、お兄ちゃん……」

 ロニンが不安そうにシュンを見上げた。

「行かせとけ。あんな奴、やっぱいらねーや」

「う、うん……」


 かくして、人間とモンスターたちは一瞬にして新天地へと転移していくのだった。





【第二章 終】

これにて第二章、完結でございます!

お読みくださいましてありがとうございました。

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