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魔王失格

 カキン!

 すさまじい金属音がセレスティアの耳をつんざいた。


 顔を上げると、ひとりの騎士がディストの剣を弾いたのが見て取れた。セレスティアが殺される寸前に、剣を差し込んだのである。


「ぐ……」

 ディストは顔をしかめ、大きく後退した。防がれたのがよほど予想外だったようだ。

 騎士は痺れた腕を片腕で支えながら、ディストに向けて強く言い放った。

「姫様を悪く言うな! ご自身で孤児院をお作りになるほど優しいお方なのだぞ!」


「こ、孤児院……だと」


 ディストが小さく呟き返す。


「そうだ! 貴様らモンスターのせいで生き場所をなくした子どもたちが大勢いるんだよ!」


 騎士のその発言が契機になった。

 王都の兵士たちは、セレスティアを守るべく、ディストの前に立ちふさがった。全員が剣を構え、油断なく人型モンスターを睨んでいる。


「みんな……」

 部下たちの忠誠心に、思わず目頭が熱くなるセレスティア。


 だがまだ安心はできない。戦いは終わっていない。

 それなら。

 セレスティアは両腕を天に突き出し、魔法を発動した。


「フォースレイン!」

 途端、青い筒状の輝きが、騎士のひとりひとりを取り囲んでいく。


「おおおおおお!」

「この力は……!」

 歓声をあげる部下たちに、セレスティアは凛然と告げた。

「あなたたちの物理攻撃力・物理防御力はこれで大幅に高まった。援護は私に任せて、あなたたちは存分に戦いなさい!」

「「はい!」」


 人間とモンスターとの戦争は、こうしてさらに激しさを増していくのだった。




 ーー死んでいる。みんな。

 魔王城から戦場を見下ろしながら、ロニンは両拳を握りしめた。


 あのディストがだいぶ苦戦しているようだ。敵兵がもともと多いうえ、ひとりひとりの戦闘力が大幅に高められている。

 見る限り、セレスティア皇女の補助魔法のようだ。さしものディストも、これは厳しい戦いと言わざるをえない。


 ロニンが全力で広範囲の魔法を放てば、戦地の人間なぞ一瞬で灰にできる。けれどそれではディストたちも巻き添えにしてしまう。


 それに……たとえ相手が人間だとしても、私はやっぱり殺したくない。敵だって同じ生き物なのだから。


 私は魔王失格なのだろうか。

 魔王とは残忍で冷酷でなければならないのだろうか。


「……あ」

 ロニンは息を呑んだ。


 ステータス強化された騎士たちに対し、さしものディストも対応しきれなくなったようだ。徐々に攻撃を受け始めてしまっている。


 それだけではない。

 好機と見た人間たちが、続々と魔王城に向かいつつある。そのなかには、勇者がいると思わしき馬車もある。


 ーーディスト。

 もう嫌だ。誰も死んでほしくない。誰もいなくならないでほしい。


 ロニンは最近習得した魔法、《ワープ》を用いた。その名の通り、魔術によって、指定した場所に転移することができる。引きこもりにふさましいスキルといえよう。


 そして魔王ロニンは、まさに唐突に、勇者たちの前に姿を現したのだった。

今後の参考にしますので、アンケートにご協力してくださると嬉しいです。

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