表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/263

圧勝劇

「やれやれ……」


 シュンはぽりぽりと後頭部を掻いた。


 ーーやっぱ戦う羽目になったか。

 めんどくせぇ。


 シュンは寝ぼけ眼をこすりながらも、《勇者》アルスの鬼気迫る眼光を真正面から受け止めた。


 自分が間違ったことをしているとは思っていない。


 いくらモンスターといえど、問答無用で殺すのは間違っている。

 それでは人間もモンスターと同様だ。


 ふいに服の裾を引っ張られる感触があった。

 振り向くと、うつむいたロニンが、控えめにシュンの服を掴んでいた。


「なんだよ?」


「なんで……お兄ちゃんは私を守ってくれるの?」


 もじもじするロニンに、シュンは肩を竦めてみせた。


「さあ。知らん」


「へ?」


「とにかく下がってろ。巻き込まれて死なないようにな」


「う……うん」


 言われた通り、ロニンは数歩下がった。そのまま逃げ出せばいいものを、律儀にシュンを見守っている。


 それだけ、ロニンはこの村人に興味が湧いていた。


 かつて自分にこれほど優しくしてくれた者なんていなかったから。


 そりゃあ魔王の娘だし、ちやほやされたりはしたが、どこか他人行儀のようなものを感じていた。父でさえロニンをそのように扱っているように感じた。


 けれど、シュンは違う。

 態度はかなりそっけないけれど、自分のことを真に気にかけてくれている。


 そんな気がした。


 ーーだから、勝って。お兄ちゃん。




 という緊迫感は長く続かなかった。

 まさに一瞬の出来事だった。


 猛然と振り下ろされた勇者の剣を、シュンは軽々と避けきってみせた。


 そして。

 シュンは人差し指だけを立てると、勇者の額にそっと触れた。


 それだけ。

 たったそれだけだった。


 勇者の身体はビクンと痙攣けいれんした。


 そのままガクンと膝を落とし、白目を剥いて倒れた。


 そうして、あまりにも呆気なく、村人と勇者の戦いは終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ