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ディストの本気

 ーー完全に俺のミスだ。


 襲ってくる矢を剣で弾きながら、ディストは歯噛みした。


 人間の文明を侮っていた。

 モンスターが荒れ果てた地に住んでいる間に、人間たちは急速に進化を遂げてきたのだ。こちらの常識が通用するわけがない。


 後退する間にも、仲間たちは続々と矢に撃ち込まれていく。その威力は尋常でなく、たった一撃で倒れる者がほとんどだ。物理攻撃力の高い者が放っているのだと予想される。


 そして。

 ザッサッザッ、という小気味の良い足音に続いて、大勢の騎士たちがこちらに進軍してくるのが見えた。

 全員が頑丈そうな赤鎧を身につけ、黒光りする大剣を構えている。


「くくっ……はははっ」


 ディストは甲高く哄笑したくなる衝動をなんとか抑えつけ、小さな笑い声をあげた。

 ーー人間側は全力でもって我々を殺しにかかるつもりだ。

 どうして、開戦前に使者のひとりでも寄越さないのか。戦う前になんらかの表明をするのが礼儀ではないのか。

 奴らはなんの断りもなく、問答無用で攻撃を差し挟んできた。


 ーー我らを、まるで虫けらのように扱っている。

 ひどい。怪物モンスターなのはいったいどちらだ。


「うおおおおおおっ!」

 知らず知らずのうちに、ディストは叫んでいた。


 全力を解放し、紺碧の霊気が波動となって周囲に拡散していく。荒野がわずかばかり振動し、騎士たちが驚きの表情を浮かべた。


「よかろう。そちらがその気ならば、俺とて容赦はせん。《引きこもり》により得た力、とくと味わうがよい!」


 後退していくモンスターの流れに逆らい、ディストは単身、騎士の群れに突っ込んでいった。

 一番近くにいた騎士に向け、上段から剣を振りかぶる。騎士も慌てて鉄製の盾を構えるがーー


「無駄だァァァァァア!」


 振り下ろされた刀身が、盾をも粉砕し、騎士の頭部を兜ごと二つに分断した。ぷっしゅううと、周囲に鮮血が飛び散る。


 武器の性能なぞはこの際関係ない。圧倒的なステータス差の前では、武器の恩恵など微々たるものだ。


「こ、こいつ……!」

「強いぞ! 気をつけろ!」


 その後も、騎士たちが次々と剣戟を浴びせてくるが、ディストはそれらすべてを弾いた。すさまじい金属音が周囲に反響する。

 騎士たちに生じたわずかな隙を縫って、ディストは《スキル》を発動した。


 その名も《一閃》。


 ディストが横一文字に剣を切りつけると、その斬撃が波動となって遠方の敵を攻撃する。

 ズドン! という巨大な衝撃音に続いて、大勢の騎士たちが波動に切り刻まれ、倒れていく。


 鎧が破壊される音、肉体が切断される音。

 あちらこちらに血液が飛び散っていく。


 これで敵はかなり減ったはずだ。さしもの騎士たちも、ディストに対して恐怖を抱きはじめているようですらある。


 ディストは背後を振り返り、モンスターたちに問いかけた。


「同志たちよ! 怯えることはない! ロニン様とこのディストがいれば、この戦、負けはせん! 皆も奮って戦おう!」


 その発言が、モンスターたちを大きく鼓舞した。逃げまどっていた部下たちは、一転して騎士たちに襲いかかっていく。


 人間とモンスターの悲しき戦争は、こうして本格的に始まった。

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