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たくましく、そして切ない魔王

「いまから、皆さんに重大な報告があります」


 こうべを垂れる無数のモンスターたちを見渡しながら、ロニンは高らかに告げた。


明日みょうにち、人間たちがここに襲いかかってきます。我々を討伐するために」


 瞬間、どよめきが周囲に広がった。

 モンスターたちは互いの顔を見やり、何事かを話し合っている。その表情には明らかな焦りの色が見て取れた。


 魔王城の城下町。

 ロニンは高台で部下たちを見下ろしながら、力強く宣言する。


「しかし! 恐れる必要はありません。私とディストが結託すれば、人間なんて恐れるに足りません。それに貴方たちだって、数ヶ月前の騒動に比べれば格段に強くなっています!」


 魔王の入れ替わりが起きてから数ヶ月。

 ロニンとディストは、モンスターたちを徹底的に鍛え上げてきた。


 さすがに《引きこもり》の件をシュンに無断で言いふらすわけにはいかないので、実際の剣の手ほどきや、彼らの《職業》に応じたレベルアップを行わせてきた。


 結果、あのときよりも個々の戦闘能力ははるかに高まった。

 ロニンの見立てでは、さきほど王都で襲いかかってきた騎士たちと同等の強さになっていると思われる。


 ーーこれは避けられなかった戦いなんだ。私が魔王に就任したときから。


「さあ、いまこそ力を合わせるときです! 人間たちに物を言わせ、我々の領土を拡大していきましょう!」


「おおおおおおおっ!」

 モンスターたちがときの声で応じる。






 ーー果たして、本当に大丈夫なのか。

 魔王のたくましい姿を脇で眺めながら、ディストはひとり、懸念を抱かずにはいられなかった。


 勇者アルスくらいならば、ロニンかディストだけで対処できる。最初から勇者なぞは眼中にない。


 だが。

 あの最強の村人ーーシュンがどう動くかまったく予想できない。


 彼の性格上、まさか戦線に上がるとは思えないが、もし彼が人間側の味方をすればーーそれだけで、モンスターたちが危うい。


 それにロニンはいまだってシュンが大好きなはずだ。本当は人間と争うことに抵抗があるに違いない。


 しかし、そんな甘いことを言っていられないのも事実だ。人間はいまにもモンスターを滅ぼさんとしているのだから。


 ーーなんて悲しい戦争なのだ。


 ロニンのたくましくも切ない後ろ姿を眺めながら、ディストはひとり、ため息をついた。

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