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震える小さき魔王

「さて」


 入学式が終わり、数名の生徒が欠伸をするなか、女性教員がひとり、壇上に立った。


「入学式お疲れさま。これからクラス分けの適性検査を行います。新入生のみなさんはもう少し頑張ってください」


「適正……検査……?」

 ロニンが頭に《?》マークを浮かべる。


 教員いわく。

 今後三年間は、生徒の適正に合ったカリキュラムで授業を進めるらしい。


 剣に向いている者は騎士に。

 魔法に長けている者は魔術師に。

 計算や商談に向いている者は大商人に。


 それぞれに向いた分野でクラス分けが行われるようだ。残念ながら、本人の希望は通用しないらしい。厳しい世界である。


「まずは騎士への適正検査を行います。本日に限り、本日の立ち会いは《勇者アルス様》が行ってくださいます。みなさん、拍手して出迎えてください」


「ぶっ……!」


 シュンは大きくむせかえった。

 勇者あいつが立ち会いだって? まあ曲がりなりにも勇者だし、それくらいの腕はあるのか。


 シュンとロニンの冷めた反応とは裏腹に、新入生たちは一斉に歓声をあげた。盛大な拍手とともに、勇者アルスが壇上に上っていく。


「す、すごい人気なのね……勇者あんなのが」


 ロニンが小さな声で呟いた。


「まあ、《魔王と戦える唯一の人間》ってことになってるからな。人間にしてみりゃ、英雄みたいな扱いさ」


「ふうん。そんなもんなんだ」


 その魔王は新入生として普通に居座っている。

 前代魔王を軽々倒した村人もここにいる。

 それを知っている二人には、ここまで勇者がもてはやされることに、どうしても納得できないのであった。


 勇者アルスは教壇に両手をつくと、大きく声を張り上げた。


「さて、これから騎士としての適正検査を行う! 諸君らには、着替えを済ませたあとーーデッドスライムと闘ってほしい。我々によって、モンスターはすべて無力化してある。攻撃を喰らっても怪我等はしないので、安心してほしい」


「え……」


 ロニンが一転して顔を青くした。


「そんな……モンスターを、まるで玩具みたいに……」


 そんなロニンの震える手を、シュンは無言で握るのだった。


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