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ぼっち確定フラグ

 とうとう入学式だ。

 シュンは制服に着替え、姿見で自分の姿を確認する。

 すこし大きめのブレザー。順調に学園生活が送れれば、これを今後三年間も着ることになる。


 隣ではロニンも着替えを済ませていた。紺色のセーラー服に、胸元には赤いリボン。大きな胸も相俟って、かなり似合っている。年頃の男子学生ならば間違いなく二度見してしまうだろう。


 シュンはおもむろにロニンの尻をパンパン叩いてみた。


「あっ……。な、なにするのいきなり!」


「尻尾が出てねえか確認したんだよ。ほんと、バレねえように気をつけてくれよ」


「だ、大丈夫ですぅ!」


 自身の尻をさすりながら、ロニンは顔を赤くした。見たところ、本当に尻尾は出ていない。これなら大丈夫そうだ。


「でもお兄ちゃん珍しいね。ちゃんと起きるなんて」


「俺はやるときゃやるんだよ」


 ふっと笑いながら、シュンは鞄を持ち、部屋を出た。慌ててロニンも後に続く。

 村人と魔王の学園生活が、これにて始まる。





 学園ーーまたの名を、クローディア学園。

 入学する者は、王族、貴族、金持ちの平民。

 言わば人類の将来を担うエリートが集う学校。


 となれば、その設備もふんだんに贅が尽くされていて当然だった。


 校舎は白銀を基調とされており、等間隔で金箔の縦ラインが描かれている。シュンもロニンも、校舎の美麗さに数秒黙ってしまった。

 校門をくぐれば、広大な噴水広場。そして食堂や図書館、商店など、敷地内だけでかなりの施設が並んでいる。


 そして、当然ながら新調の制服を着た学生がぞろぞろと周囲を行き交っている。彼らはみな、シュンたちと同級生ということになる。


「うわあ……」

 ロニンは感嘆の声をあげた。


 ここで彼らを抹殺すれば将来の有望株が潰せるのだが、そんなことは一切頭にない。ただただ、目の前の光景に感動していた。


 でも。

 数分後、ロニンはふと首をかしげた。


「誰も……私たちに声をかけないね」


 彼らはまだ入学式も始まっていないというのに、そこかしこにいる新入生たちに忙しなく声をかけている。

 のだが、シュンたちには目を向けもしない。

 学生らはシュンだけを残して、互いに談笑に勤しんでいる。


「ま、そりゃそうだろうよ」


 シュンは思わず苦笑した。

 親から色々と仕込まれたのだろう。新入生たちはコネクション作りに夢中のようだ。


 しかしながら、シュンはただの村人。

 親が事業で成功したわけでもないし、有力な貴族との繋がりもない。政治的な目で見れば、新入生らにとってシュンにはなんの価値もない。


 ーー早くもボッチ確定か。


「ほれ、行こうぜ」

 乾いた笑みを浮かべながら、シュンはロニンとともに入学式の会場に向かうのだった。

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