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明日からは村人じゃなく学生です

 出発の日。


 今日は入寮日だ。

 さらに翌日には入学式がある。今日までに王都に到着し、入学式に備えなければならない。

 ちなみに、村から都までは馬車でも半日はかかる。そこから荷物を移動し、部屋を整理するのはなかなかのハードワークだ。


 だから朝早くには出発しないといけないのに。


「おにーちゅわーん!」


 シュンは昼に差し掛かってもまだ眠っていた。

 まあ、ロニンもロニンで、シュンと一緒のベッドに寝る幸福感で寝過ぎてしまっったのだが。


「早く起きてよぉ! まずいってば!」


「……んだよ、うっせぇなぁ」


 寝ぼけた声を出すシュン。

 彼は元々引きこもり。早朝に起床することは、彼の最も苦手とするところだった。


「早く起きてよ! 入学式に間に合わないよ!」


「いいじゃんか……あと五分……」


「うわーん!」


 必死こいて村人を揺する魔王であった。





「……で、この時間になったわけね」


 母親が呆れたようにため息をつく。もう夕方だ。


「ごめんなさい……お兄ーーじゃなくて、シュンくんがなかなか起きなくて」


「いいのいいの。シュンに規則正しい生活なんて無理なんだから」


 村の出入り口にて。

 母親は呆れ顔でシュンたちを見送りにきた。他にも数名の村人たちが待っていてくれた。なにせシュンは村の英雄なのだから。


「シュン様、学園でも頑張ってくださいね!」

「さらなる立派なお姿が見られるよう、期待しています!」


「お、おう。ありがとな」


 ぎこちなく返事をするシュンに、母親が心配そうに問いかける。


「でも、本当に馬車いらないの? せっかく村長が用意してくださったのに」


「いらねぇよ。馬車じゃおせぇ」


 シュンは面倒くさそうに後頭部をかく。

 彼は引きこもりレベル999。

 そしてロニンも正式な魔王となり、さらに《引きこもりレベル》を上げている。


 この最強の引きこもり二人に、馬車など無用の長物だった。むしろ走ったほうが早いくらいである。シュンの計算では、夜になるまでには都に着く。


「じゃ、行ってくるかな。……あ、えっと」


 出発する前に、シュンは母親に目を向けた。


「へ?」


「色々とありがとな。そんだけだ」


「……うん。そっちでも、頑張って」


 若干目を潤ませながら、母親はシュンに手を振った。


 かくしてシュンは、《村人》から《学生》になるべく、王都に向かうのであった。

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