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叶わぬ願いならば

「……なるほどな」


 すべての話を聞き終え、シュンは静かに頷いた。


 かつてディストを含めた三人で食事をしたリビング。

 そこのテーブルで、シュンとロニンは向かい合っていた。


「ごめんね。隠すつもりじゃなかったんだけど……その、言いづらくて」


 うつむきながら呟くロニンに、シュンはなにも答えない。


 村人と魔王。

 この上なく仲の良い二人だが、ひとりは人間、もうひとりはモンスター。

 本来は交わることさえありえない種族間。

 そんななかで、どうしても思惑がすれ違ってしまう。


 特にロニンは魔王だ。自分だけの感情に流されて、一般のモンスターを全滅させるわけにはいかない。

 そしてモンスターのために働けば、確実にシュンたち人間に迷惑をかけることになる。まさに板挟み状態だった。


「ごめんねお兄ちゃん。もし迷惑なら、私、ここにはもう来な……」


 途端。

 シュンはおもむろに立ち上がり、ロニンのそばに歩み寄った。


 そして。

「ん……」

 ロニンと深く唇を重ね合わせる。


 シュンとの行為自体は初めてではない。魔王戦ののち、ドキドキに耐えられなくなったロニンが自分から申し出た。


 長い長い交わりのあと、ロニンはぼうっとした頭でシュンを見据えた。


「前にも言ったろ。めんどくせーことは考えるな。おまえはおまえの好きなようにしな」


「あ……」


 ーーお兄ちゃん。

 もし、私たちの種族が同じであったなら。

 きっと正真正銘の恋人関係になれたのに。

 胸のうずきを必死におさえつけながら、ロニンは小さく頷くことしかできなかった。


「……で、来るんだろ? 学園に」


「うん……行きたい」


 単なる調査のためだけじゃない。

 シュンと一緒にいられる。それだけで幸せだから。叶わぬ恋ならば、せめてすこしでも長く彼とひとつでありたいから。


 ロニンはぼうっとした頭のまま、シュンの胸に飛び込んだ。


「おおっと」


 めんどくさそうに言いながらも、やっぱり優しく受け止めてくれるシュン。


「参ったな。俺いま賢者タイムなんだが」


「え……賢者?」


「いやなんでもねえ。が、頑張るぜ俺」


「う、うん」


 よくわからなかったが、ロニンはなにも考えず、シュンの胸に顔をうずめた。

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