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突然現れる魔王ちゃん

 学生。

 それは非常に希少な身分である。


 そもそも、学校自体が世界にひとつしか存在しない。

 武術、魔術、その他の勉学を学ぶ場所である。学校を卒業した者は、それだけである種のブランドになる。

 そして教師は、その道では非常に高名なスペシャリストだ。

 ゆえに、学校を卒業した者は間違いなくあらゆる業種から引っ張りだこになる。


 つまり、将来有望な若者しか入学できないのだ。

 通常であれば、王族、あるいは貴族しか入学できない。

 あるいは、事業を成功させて大金持ちになった平民の子どももいる。だがそれは本当に一部である。


 そして。

 さらにごく稀に、王都からの推薦で入学する者がいる。


 これに関しては極めて珍しい例と言ってよい。


 なぜならば、武術、あるいは魔術で、類稀たぐいまれなる才能の持ち主に、国王がみずから推薦状を発行するからだ。


 つまりーー実力による入学。

 親の七光りで無理やり入学させられるような連中とは違うのだ。


 今回推薦されたのは、前に村を救ったからだろうとシュンは思った。おそらく、村長か勇者あたりが国王に進言したのだ。


 それ以外にもちゃっかり前代魔王を討伐しているのだが、それはモンスターたちしか知り得ないことだ。人間とモンスターの戦いは依然として続いているのだから。


「どうする? 入学するの?」


「当然だ」


 親の問いかけに、シュンは即答する。


 そう――

 それだけ期待の込められた若者に、国は全力で支援を送る。

 具体的には、衣食住のうち、食と住は無料で提供してくれるのだ。食糧難のいま、これに乗らない手はない。


 もちろんそのぶん、ほぼ毎日学園に通わねばならない。

 だが《引きこもりレベル999》の彼はもとよりその気はなく、すくなくとも週の半分は休むつもりである。

 それに、自分の知らない世界に行ってみるのも悪くはない。


「い、行くのね。わかったわ」


 親は意外そうに目を丸めた。自分の息子が外出することを了承するなんて、思ってもいなかったから。


 すると。


「ねえ、それって私も入れるの?」


「どわっ!」


 突然脇から現れた少女に、シュンは驚きの声をあげる。


「ロ、ロニン、おまえなんで……!」


「え、来ちゃ駄目だった?」


 のほほんとした顔で言う魔王ロニン。


「ちょっと疲れちゃって。遊びにきちゃった」


「だからって急に来るなよな……」


 ぼさぼさと後頭部をかくシュン。


 一ヶ月前。

 魔王戦ののち、ロニンは彼に毎日会えなくなることに憂慮した。

 そこでおこなったのが、転移陣をシュン家のリビングに作成すること。これにより、魔王城からシュン家へと、一瞬で行き来できてしまうのだ。


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