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学園へご招待

「あ、ああ、ああんっ」

「だ、駄目だ。イク、イクぞぉ!」

「お願い、イクなら一緒に!」

「あああああっ!」



 どうでも良いけど、賢者タイムで自分のナニを拭くときって、なんとも言えない虚しさがある。


「……ふぅ」

 そんなことを思いながら、シュンは濡れた紙くずを放り投げた。

 スカッ。

 残念ながらゴミ箱には入らず、床に落ちてしまった。


「めんどくせー」

 ぶつぶつ言いながら、シュンは立ち上がり、紙くずをゴミ箱に捨てる。


 魔王との戦いから一ヶ月。

 シュンはひとり、平穏無事な毎日を過ごしていた。いつもの引きこもり生活である。

 ベッドで寝転がり、腹が減ったら菓子を頬張る。退屈になったら本を再読するか、すけーべな本を開いてオナニーする。それの連続だ。


 特になにも起こらない惰性の日々。


 反して、ロニンやディストは現在、魔王城で多忙な日々を送っている。なにせ二人は魔王とその側近なのだ。さぞ忙しいことだろう。いまは領地を拡大するために奮闘しているとのことだ。


 そしてすなわち、それは人間側の土地を奪うことを意味する。

 シュンとしては複雑な気分だった。ロニンを応援したいところではあるが、モンスターの行動範囲が広がれば、それは他の人間が苦しむことに直結する。


 人間とモンスター、双方がバランスよく共存するーー

 それはムシの良すぎる考えなのだろうか。結局どちらかが泣きを見るしかないのか。


 そんな答えの出ないことを考えてしまい、シュンは大きなあくびをする。


 ーー考えるだけ無駄だ。めんどくせぇ。


 シュンは自室を出て、リビングに入った。買い溜めしていたパンを取るべく、棚に手を伸ばす。


 だが。

 ーーない。

「ありゃ」

 シュンは思わず素っ頓狂な声をあげる。


 そういやつい最近、全部食べちまったばかりだったな。すっかり忘れていた。

 そうなると、まずいことになる。

 村人救出の際に貰った資金や食物が尽きつつある。あと数日もすれば、俺は餓死へのカウントダウンを迎えることになる。


 よくよく考えれば、それも当然だ。

 合計で四ヶ月も引きこもっていたうえに、うち二ヶ月半はロニンとディストを養っていたのだ。村人から譲り受けた資産など、湯水のごとく消えてなくなっただろう。


 やべ。どうしよう。

 いい加減に働くしかないのか?

 いや、絶対に嫌だ。なにがなんでも働きたくない。


 ーートントン。


 そんなことを考えていると、ふいに扉をノックする音が聞こえた。リビングの扉ではなく、玄関からだ。来訪者である。


「はいはい」


 シュンはズボンを履くと、玄関の扉を開ける。


 顔を出したのは母親であった。


「あ、シュン。起きてたのね」


「なんだよ」


 しかめ面で答えるシュン。


「あのね、別に嫌だったらいいんだけど……都から連絡が来てるのよ。あなたに学園に入学してもらいたいって」


 ーー学園。


「それだ!」


 シュンは思わず叫び声をあげた。

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