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魔王は本当のクズ野郎でした

 長い長い階段だった。


 いくら登れども、まったく景色が変わらない。


 精神的にそろそろ音を上げそうになったとき、とうとう終着点が見えてきた。


 見上げんばかりの巨大な二枚扉。

 自身の尾を噛む大蛇の彫刻が、盛大に描かれている。


 その荘厳きわまる扉を見て、シュンはいやが上にも確信した。


 ここが魔王城の最上階であると。

 そして、魔王の待ち構える場所であると。


「いくぞ」


 手を繋いだまま、シュンはロニンに問いかける。


 魔王の娘もやはり緊張した面持ちでゆっくりと頷いた。


 その瞬間。


「あん、あん、あんっ」


 扉の向こう側から、なにやら艶めかしい声が響いてくる。しかもその女の声はどんどん激しくなっていく。


 ーーおいおい。

 シュンは思わず扉に伸ばしかけた手を止めた。


 真っ最中かよ。このタイミングで。


 シュンは気遣うように隣に目を向けた。親同士の営みなぞ見たくなかろう。


 しかしながら、シュンの予想とは打って変わり、ロニンの表情には怒りの感情が貼り付いていた。


「嘘、でしょ……。この女の人って……」


 呟くなり、勢いよく扉を開けてしまう。


 シュンが止める間もなく、巨大な二枚扉はあっさりと、内部の状態をさらけ出した。


 二人の男女がベッドの上で寄り添っていた。

 これから行為を始めるところだったのだろう。白いドレスを着た女の服装は際どく乱れていた。


 ロニンはその男女を冷たく見下ろしながら、決然と言い放った。


「なにしてるの! お父さん……そしてセルス!」


 セルス……!

 その名前を聞いた途端、シュンは激しくせき込んだ。


 セルスーーすなわち、時期魔王の有力候補。


 ロニンは目に涙を溜ながら、声を激しく張り上げた。


「父さん! 私を見捨てておいて……セルスと、こんな……こんなことを!」


 取り乱したロニンを見つめながら、シュンはすべてを察した。


 世論が傾いたとはいえ、あまりにあっさりと娘を見捨てた魔王。


 その背景には、こんな裏があったのだ。

 すなわち、もうひとりの有力候補と身体の関係を持つこと。娘のことよりも、自身の欲望を優先させたこと。


「クズ野郎が……」

 無意識のうちに、シュンは呟いていた。

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