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最強の引きこもり軍団

 ロニンはしばらく呆けたように立ち止まっていた。


 血に染まった自身の剣。

 息絶えて動かなくなった四天王。


 それらをたっぷり数秒間眺めたあと、最後にシュンに目を向けた。


「これ……私がやったの?」


「当然だ。俺はなんも手出ししていない」


 肩を竦めて言うシュンだが、ロニンはまだ信じられなかった。


 ーー三体もの四天王を、こんな一瞬で片づけるなんて。


 以前のロニンであれば絶対にできなかったことだ。

 というより、たとえ相手が一体でも勝てなかったと思う。


 奴らはそれだけ戦闘能力に秀でているし、だからこそ魔王に《四天王》という役職を与えられたのだ。


 なのに。

 一体あたり一撃の攻撃で決着が着いたなんて。


 この驚くべき事実を、そう簡単に受け入れられるはずもない。


「すげえだろ? これが《引きこもり》の真の実力ってやつだよ」


 こつこつとロニンに歩み寄りながらシュンが言う。


「う……うん。すごい。すごいよお兄ちゃん!」


「はっ。自信がついたなら何よりだ」


 シュンは小声でそれだけ呟くと、決然と言い放った。


「さあ、いこうぜ。おまえの強さを魔王に見せつけてやれ!」


「うん!」


 こうして二人は、魔王城の最上階へと突き進むのであった。


   ★


「な、なぜ……」


 四天王がひとり、グリズオウが息も切れ切れに囁く。


「なぜ、俺の攻撃が当たらないのだ!」


 なおも喚き散らしながら、太い腕を次々とディストに打ち下ろしていく。


 だが、ディストにはまるで当たらない。ひょいひょいと華麗にかわされるまま、かすりもしない。


「ふん。でかい口を叩いておいて、結局はこの程度か」


 繰り返される殴打を避けながら、ディストが余裕の表情で言う。


 実際にも、ディストにとってグリズオウの攻撃は鈍重そのものだった。


 初めは手加減されているのだと思っていた。

 だが、どうもそうではないらしい。グリズオウは本気の攻撃を繰り出しており、その上でディストに避けられている。


 ーー俺自身も驚いているよ。

 村人による《引きこもりの修行》が、ここまで成果をあげるとはな。


「さて、そろそろ飽きたな」


 言うなり、ディストは右手を力一杯握りしめ。


 グリズオウの左胸に向けて、勢いよく拳を打ち付けた。

 たったそれだけの攻撃で、周囲に突風が舞う。


「かはっ……」


 グリズオウは一瞬だけ激しく表情を歪めると。

 そのまま地面に崩れ落ち、周辺に地響きを轟かせた。


 一撃か……?


 ディストは倒れたグリズオウを見下ろしてみる。

 だが動き出す気配はまったくない。本当に絶命してしまったようだ。


「素晴らしいな……この力」


 新しく攻め込んできた敵兵を見つめながら、ディストはひとり、呟いた。

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