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四天王あらわる

 薄暗い通路のなかを、ロニンとシュンはひたすら進んでいた。


 非常に狭い。

 人ひとりがやっと通れるくらいのスペースを、二人は手を繋いで歩んでいた。


 ーーなんだろう、これ……


 シュンの手にひかれながら、ロニンは胸の高鳴りが止まらなかった。


 彼の手に触れることで、さっきまでの緊張は幾分か和らいだ。


 けれど、今度は別の意味でドキドキが止まらない。

 ずっと魔王城で生活してきたロニンにとって、これは初めての感覚であった。


 誰かに恋心を抱くなんて、未経験のことだから。


 知らず知らずのうちに、ロニンは握る手に力を込めていた。


「……? どうした?」


 不審に思ったシュンが振り返ってくる。


「あっ、あっ、えっと、なんでもないの」


「……変な奴だな」


 シュンは首をかしげ、また歩み始める。


 そんな彼の背中を見つめながら、ロニンは思うのだった。


 ーー私、お兄ちゃんに会えてよかった。

 本来なら無関係なことなのに、こうして魔王城まで来てくれてありがとう。

 私も、変われるように頑張るからーー


 ひとり決意を新たに、ロニンはシュンの手に引かれていくのだった。


 何分ほど歩いただろう。


 狭い通路を抜け、今度は広い部屋に出た。


 二人が出ると、部屋に通じていた穴は閉じ、裂け目などもまったく見えなくなった。


「ここは……?」


 呟きながら、シュンが室内を観察する。


 弓や剣、鎌など、さまざまな武器具が壁に立てかけられている。甲冑もあちらこちらに飾られており、どこか物々しい雰囲気を感じさせる。


 微妙な懐かしさを味わいつつ、ロニンは言った。


「訓練場だよ。城を警備するモンスターたちは、ここで訓練してるの」


「ほーん。なるほどねえ」


 妙に納得するシュン。

 万が一この抜け穴を使われても、訓練中のモンスターに返り討ちに遭う。たしかに理には適っている。


 ただし、いまは一匹たりとて敵兵はいない。ディストがうまく陽動してくれているようだ。


「さて、行くか。魔王の部屋はどうやって行くんだ?」


 通路を出たことで、シュンはロニンから手を離してしまった。


 そのことに名残惜しさを抱きながら、ロニンは返答する。


「えっと、まずこの部屋から出て……」


「いや。先には行かせませぬ」


「…………!」


 不意に第三者の声が聞こえ、ロニンは息を呑んだ。


 シュンもさっと身構え、ロニンを背にまわす。


「やはり我の推測は当たっていたようですな。ここに三人の四天王を配置して正解でしたわ」


 三人……四天王……


 ロニンがその言葉を理解するよりも早く。

 突如、なにもなかった空間から、三体の闖入者が姿を現した。


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