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読めない男

 ーー自分の家に帰るだけ。

 お兄ちゃんはさっきそう言った。


 たしかにその通りだ。私は自分の家に戻るだけでしかない。


 けれど、いままで私の世話をしてくれたモンスターが、今度は敵対心を剥き出しにして襲いかかってくる。


 その辛さには、どう頑張っても慣れそうになかった。




 無事に空間転移を済ませたロニンとシュンは、二人同時に周囲を見渡した。


 裏口。たしかにその言葉がぴたりと当てはまる。

 魔王城は正面入口しょうめんいりぐち以外は広大な湖に囲われている。


 ロニンたちが立っている場所もまた、見渡すばかりの湖に包まれていた。


 魔王城の裏側に設けられた小さな足場。そこに二人は転移していた。


「ひゅう」


 ロニンの緊張感など吹き飛ばすように、シュンは口笛を鳴らした。


「すげえな。本当に《秘密の場所》じゃねえかよ。……で、これからどうすんだ?」


 言いながらシュンは周囲を見渡す。


 そう。

 転移したはいいが、魔王城への入り口があるわけでもなし、ただ足場に突っ立っているだけ。シュンには今後の展開が把握できなかった。


「えっとね……」


 ロニンは魔王城の壁面をじーっと見つめると、とある三点を指先で押し込んだ。


 瞬間。

 ゴゴゴゴゴ……という振動音を響かせながら、壁の一部が二枚扉のように開かれた。これなら中に入ることができる。


「へぇ。こんな仕組みなんだな」


 目を輝かせながら壁を触るシュン。

 そんな彼を見て、ロニンは驚嘆を禁じ得ない。


 魔王城とは、人間にとっては未開の地、シュンとて初めて訪れる場所のはずだ。


 しかも最上階には、人類にとって最悪の敵ーー魔王が待ち構えている。


 なのに、シュンの堂々たる振る舞いは変わらない。


 素直にすごいと思う。

 ーー私は……こんなに緊張しているのに。


 その内面を見抜いたのか、シュンはさっと手を差し出してきた。


「さ、いこうぜ」


「え……?」


「え、じゃない。手を繋ぐんだ手を。おまえ、このままじゃ心臓が破裂して死ぬぞ」


「あ……」


「魔王と戦う前に死んだロニン! そんな馬鹿馬鹿しい結末は御免だぜ、俺は」


「わ、私だって嫌だもん!」


 反論しながらも、ちゃっかり手を繋ぐロニンであった。

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