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自分の家に帰りましょう

 ディストが魔王城に突撃して、数十分が経過した。


 激戦はまだ続いているらしい。戦いの声が重なり合って響いてくる。


 シュンはふうと息を吐くと、隣で不安そうに縮こまっているロニンに言った。


「さて、そろそろいいんじゃないか」


「も……もう行くの?」


「おう。ディストのおかげで、敵はほとんど城下町に集まってる」


 チャンスはいましかない。この好機に攻め込むしかない。


 だというのに、ロニンは一向に動き出す気配を見せなかった。

 震えていた。

 この唯一にして最大の好機を目の前にして。


「……おい」


 シュンは優しく、ロニンの頭に手を置いた。


「自信持てよ。なんのためにずっと引きこもってたと思ってんだ」


「……うん」


「もっと気楽に考えようぜ。おまえにとっちゃ、自分のウチに帰るようなもんじゃねえか」


「うん……わかった」


 言いながら、ロニンは潤んだ瞳でシュンを見上げる。


「私も頑張るからーーお兄ちゃんも、私のそばからいなくならないでね」


「おうよ」


 ぐいっと力強く親指を突き立てるシュン。


 そんな彼を見て、ロニンは数秒だけ頬を赤らめると。

 目の前の空間に、突然両腕を突き出した。


「魔王の子、ロニン。魔王城のシークレットルートを開通するーー」


 ロニンが小さな声でぶつぶつ唱えた瞬間。


 ふと、眼前に人型サイズの白いもやが現れた。

 それは雲のごとく空中をふわふわと漂い、この荒れ地には場違いな存在感を示している。


「……それが、例の転移門か」


「うん」


 シュンの問いかけに、ロニンは小さく頷いた。


 魔王の血を継ぐ者にのみ使用できる、空間転移魔法。

 いまロニンが使った技がそれだ。

 すなわちーーいきなり魔王城内部へと転移できる空間を作成したのである。


 もちろん、どこでも使い放題というわけではない。


 このようにして、魔王城の領地内でなければ転移魔法を使えないらしいのだ。


「これをくぐれば、魔王城のどこに出るんだ?」


「裏口の、誰もいないところに……。そこに方位陣が敷かれてるから」


「……なるほどな」


 まあ、魔王たちの秘密の場ということだろう。


 さすがに自分の部屋に包囲陣は敷いていないようだ。


「じゃあ、ロニン。いこうぜ!」


「うん!」


 かくして、二人は白いもやに飛び込んでいったのであった。


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