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引きこもり軍団の誕生

「え……」


 ロニンは大きく目を見開いた。

 信じられなかったのだ。

 彼の優しすぎる発言が。


 さんざん迷惑ばかりかけてきたのに、この上、もっと面倒を見てくれるなんて。


 なんで。どうして……


 気づいたとき、ロニンは視界がぼやけるのを感じた。


 かつて、ここまで深い愛情を受けたことがあっただろうか。


 そりゃあ魔王の娘だし、部下からも父親からもチヤホヤされてきた。


 だけど、自分の身を危険に投じてまでロニンを守ってくれる者はついぞひとりもいなかった。


 現に父親ですら、世論に負けてロニンの敵になってしまっている。


 モンスターとはそういうものだと思っていた。結局は自分が一番可愛いのだと。自分の利益にならないと知ったら、すぐに寝返るのだと。


 でも、シュンは違う。いつもめんどくせえとか言ってるくせに、真に私のことを気にかけてくれている……


「あ、ありがとう……お兄ちゃん……」


 それだけを言うのが精一杯だった。


 そんなロニンの頭を、シュンは一度だけ撫でると。

 いつもの調子で、にやけながら言った。


「ただし、今後メシはおまえにつくってもらう。材料はまあ俺が買ってきてやるよ」


 それくらいお安いご用である。ロニンは黙って頷いた。



 そのやり取りを見て、ディストは深く息を吐いた。

 シュンの強さ。優しさ。思慮深さ。

 ロニンが好意を持ってもおかしくないと、ディストも認めざるをえなかった。


 もちろん、この事実に嫉妬せずにはいられない。


 だが、世論が《ロニン反対》に傾いたとき、ひるんでしまったのも事実だった。


 それからロニンと関わる時間が減ってしまった。きっと彼女もそれに気づいていただろう。


 ーー俺はロニン様の側近として失格だな。村人に適わないわけだ。


 だが、これからは命をかけてでもロニン様を守ろう。


 それが彼女の側近としての、唯一にして最大の務めなのだから。


 そして。

 彼女を守るためには、村人の助けも必ずや必要になるだろう。レベル999の存在はいかにも大きい。


 決意を胸に秘めながら、ディストは言った。


「村人よ。魔王軍の情報を知っているか」


「いや? 全然」


「ならば教えよう。本来は人間なぞに秘密を漏らすのは御法度だが、俺もロニン様のために命をかける」


「ほーう?」


「現状では、おそらく魔王軍はこちらに攻め込んでこない。おまえがあまりに強すぎるからな。魔王軍も足踏みしているのだよ」


「なるほどね」


 シュンは鼻を伸ばしながら頷いた。


「だから現在、四天王が自身の魔力を高めるべく修行をしている。こいつらが最大の脅威になるだろう。そして準備が整い次第、攻め込んでくる。だいたい三ヶ月後だな。おまえはそれに備えてほしい」


「ほーん」


 頷きながら、シュンは後頭部を掻いた。なにかよからぬことを考えている顔だった。


「ディストさんよ。四天王の修行が完成するのが三ヶ月後ってことか?」


「まあそうだな」


 それを聞いたシュンはにやりと笑った。


「なら、俺らが待つ必要はねえ。こっちもたっぷり修行して、俺らから攻めようぜ。二ヶ月半もありゃ、立派な《引きこもり軍団》ができあがらぁ」


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