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魔王をぶっ殺そうぜ!

「ふう」


 最後の唐揚げを食べ終え、シュンは一息ついた。

 食事前には大皿が五つはあったのだが、シュンとディストが食べ尽くしてしまった。もはや野草の一枚も残っていない。


 それだけ美味だった。

 シュンはずっと、愛情のない冷えた食事だけを食べてきたから。


 それはディストも同様だった。

 ロニンが無茶な勇者討伐に向かわされたときから、緊張が止まらなかったのである。


 だが、こうして無事に、ロニンの手料理を食べることができた。彼にとって、これ以上の幸せはないのである。


「思いもよらなかったな……よもや、人間と食をともにする日が来ようとは」


 だからこそ、ディストは素直な感想を述べてみせた。


 愛するロニンが無事に生きている。殺されずに済んでいる。

 それは村人のおかげだとーーディストから見ても明らかだから。


 ロニンは可愛そうな子なのだ。

 人間から恨まれ、さりとてモンスターからも迫害されている。どこにも居場所がないのだ。


 それを救ったのは間違いなくシュンであると、ディストも認めざるをえない。


「村人よ。教えてほしい。貴様の強さの理由を」


「んー、んー。そうだなぁ」


 シュンは言いにくそうに後頭部を掻く。


「心配するな。こうしてロニン様の無事が確認できた以上、俺が魔王に寝返ることはない」


 言われてシュンはロニンに視線で問う。


「大丈夫だよ。ディストは本当に真面目だから」


「……そうか」


 そうしてシュンは説明した。

 引きこもりなる《職業》があることを。

 シュンは引きこもりレベル999であることを。

 そしていま、ロニンが《引きこもり》を取得するために頑張っていることを。


「ば、馬鹿な……」


 話を終えたとき、まずディストはそう言った。


「家にこもっているだけでそこまで強くなれるだと……? は、初耳だ……」


 だが、そうでもなければ、ただの村人があそこまで強くなれるはずがない。ディストとしては納得するしかなかった。


 いまだ唸っているディストを放っておいて、シュンはロニンに顔を向けた。


「俺も事情を聞かせてもらった。おまえが強くなりたい理由が……よくわかった」


 ロニンは孤独だったのだ。

 このままノコノコ家に帰っては、有力候補の派閥に暗殺されてしまうか、また無茶な任務を頼まれる。


 そうならないためにも、圧倒的な強さが必要なのだ。


「約束を変更しよう。もっともっと強くなって、モンスターたちを見返せ。魔王をぶっ殺せるくらいに強くなれ」

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