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神へと至る試練

 シュンはスキルを発動させた。

 闇の双剣。

 前代魔王を討伐とうばつしたとき、とても役に立ってくれたスキルである。そしていまも、息子トルフィンが同じスキルを使用している。


 ――正真正銘、これが最後の戦いだ。

 シュンは隣の息子へ視線を向けた。

 すべてを察したらしい。トルフィンも首肯を返してくる。

 特に合図を取り合ったわけではない。にも関わらず、駆けだしたのは二人同時であった。


「おおおおっ!」


 親子の叫声が重なり合う。

 先頭にシュン、やや遅れてトルフィンが、神めがけて疾風しっぷうのごとく疾駆する。

 二人とも世界でトップレベルの強者だ。走るだけで暴風が舞う。シュンに至ってはほとんど足に地をつけていない。

 親子は勢いよく双剣を振りかぶり、二人同時にディストに斬りかかった。


小癪こしゃくな」

 神の呟き声が聞こえた。

「出でよ。なんじこそ我が砦。絶対障壁なり」


 魔法か……!

 シュンが気づいたのと同時、ディストの前方にエメラルドグリーンに透き通る壁が発生した。

 シュンたちが打ちつけた剣は、その透明な幕に阻まれ。

 ――カキン。

 甲高い金属音とともに、二人の剣は弾かれた。


「無駄だ。君たちもかなり強くなったようだが……創造主たる神には勝てん」


 ディストは凍てつく声を発すると、大振りな杖を横一文字に薙ぎ払った。

 次の瞬間、見えない衝撃波が親子を襲った。腹部に強烈な痛みを感じたあと、シュンは後方へ吹き飛ばされた。空中でなんとか体勢を整え、膝立ちの格好で着地する。


 だが。


「がはっ」

 シュンの隣で、トルフィンが地面に打ち付けられた。ガン、という乾いた音が室内に響きわたる。

「ってえ……」

 後頭部をさすりながら、トルフィンは苦い顔で立ち上がった。その様子を見るに、それなりのダメージが通ったことが予想される。


「大丈夫か、トルフィン」

「なんとかな……。くそ、やっぱり神なだけあるよな。あいつ強えよ」


 無理もあるまい。

 シュンはアリアンヌによって神にも匹敵する力を手に入れたが、トルフィンはその限りでないのだ。


「無理するなよ。危ないと思ったら退け」

「冗談。あんなクソ野郎を前に退けるかよ」


 違いない。

 シュンはディストへ視線を戻した。

 創造神は杖を両手に持ち、顔の前にまで持ち上げていた。しかもただならぬ威圧感を感じる。


 ――来る!

 シュンとトルフィンはさっと構えた。いまから襲いかかったところで、おそらく間に合わない。


 ゴゴゴゴゴ……

 すさまじい震動が発生すると同時、ディストの周囲に灰色の霊気が現れた。それは竜巻のごとくディストを取り囲み、尋常ならざる威容を醸し出す。気のせいか、奴のまわりに骸骨の頭部のようなシルエットが見えた。


「喰らうがよい! 冥府より放たれし魔のそうを!」


 ――まずい。

 常識を超えた神の霊圧に、シュンは全身の毛が逆立つのを感じた。


「トルフィン、逃げろ!」

 叫びながら、シュンは横方向に駆け出す。トルフィンも数秒遅れて、シュンとは逆方向に走り出した。


 直後。

 創造神ディストの杖から、数えるのもおぞましい大量の槍が飛来してきた。しかもただの槍ではない。一本一本が紫のオーラをまとい、極限にまで殺傷力を高められている。ひとつでも直撃すれば計り知れないダメージを負いかねない。


 神秘なる《星合の間》の床に、魔の槍群やりぐんが無数に突き刺さっていく。その度に轟音が発生するが、シュンにはその光景を眺めていられる余裕はなかった。

 槍は一向におさまる気配を見せない。悪魔の手に捕まらぬよう、ひたすら走るのみ。


「ふふ。人間よ、無駄だ」

 槍の雨が降り注ぐなかにあって、ディストの哄笑が嫌に大きく響き渡る。

「私は創造主。ステータスの概念を超えた神だ。MPに関係なく、無尽蔵むじんぞうに槍を生み出すことができる」


 ――マジかよ……

 シュンは思わず舌打ちした。

 無限に攻撃し続けられるとあっては、ただ逃げ回ることに意味はない。疲れるだけだ。さすがは創造神なだけあって、これまでの敵とは格が違う。


 それならば……!


「トルフィン! 迎え撃つぞ!」

「お、おう」


 シュンの呼びかけに、トルフィンは驚きながらも頷く。二人同時に闇の双剣を構え、無数の槍群と相対する。


「ほう。我が魔の槍と対峙する気かね。無謀な」

「……はん。どうせ時間がねえんだ。だったら正面突破してやらあ!」


 残り時間 ――0:08――

 

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