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勇者の覚悟

 天空城。

 見渡す限り金属質な平面が広がっている。

 障害物の類はいっさいない。

 そして真正面には、いつか見た、巨大な神殿。


 以前に目にしたそれは紺碧一色に染まっていたが、いまシュンたちの眼前に屹立する神殿は、純白に彩られていた。

 ところどころに金の紋様が描かれており、荘厳な雰囲気が感じられる。


 そして。

 その神殿の前に立ちふさがるは、見るも大勢の天使たち。各個、おどろおどろしい武器を携え、シュンたちを通すまいと厳しい視線を向けてくる。


 ――多いな。

 シュンは心中で舌打ちした。

 一般の天使くらいなら相手にならないと思う。苦戦することもなく倒せるはずだ。


 問題は制限時間である。

 こうして足踏みしている間にも、世界消滅までのカウントダウンは刻一刻と進んでいる。さらに言えば、この先にいるはずのトルフィンの身も心配だ。


 どうにかして切り抜けられないか……!

 シュンが考え込んでいると、

「――ここは俺が引き受けよう」

 勇者アルスが一歩前に進み出た。剣を引き抜き、無限にも思える天使の大群と対峙する。その瞳には微塵の迷いも感じられない。


「おまえ……大丈夫なのか。あの数だぞ」

 心配を禁じ得ないシュン。

 無論アルスの強さはわかっている。だが、アルスもさっきまで激闘を重ねてきたはずだ。さぞ疲労が溜まっているだろう。

「気にするな。俺に任せてくれ」

 アルスはそう断言する。

「ここで時間を取られたら、どの道世界の終わりだ。俺のことは気にしなくていい。先にいけ」

「だ、だが……」

「何度も言わせるな。俺は勇者。人類の希望なんだぞ?」


 冗談めかして言う勇者だが、その表情は真剣そのものだった。


「…………」

 シュンは考える。この場を彼ひとりに託すのは心苦しいが、しかしアルスの言い分も最もだ。

「……わかった。ここは任せたぜ。勇者」

「ああ。そっちも頑張ってくれよ――国王様」

 シュンは頷くと、ロニンとともに神殿へ向けて突っ込んでいった。当然のように天使たちが攻撃を仕向けてくるが――


「おおおおおっ!」

 勇者アルスが、まさに神速のごときスピードでそれらの天使を斬りつけていく。もちろん天使たちも強い。この一撃では沈まないが、しかしシュンたちを通すには充分な《隙》を生み出すことはできる。


 ――あとは頼んだぞ、シュン、そしてロニン―― 

 胸中でそう願いながら、アルスはさらに剣を振るい続けた。


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