表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

250/263

神々への挑戦

 ロニン。

 アルス。

 いま思えば、シュンの人生はこの二人との出会いから始まった。


 不思議なものだ。

 当時は人と関わるのも嫌だったのが、こうして国を立ち上げ、あろうことか世界を救おうとしているだなんて。以前のシュンであれば、家族が死のうが世界が滅ぼされようが、みずから行動を起こそうとはしなかったはずだ。


 シュンが変わったきっかけといえば、やはり、いま手を繋いでいるロニン以外なかった。

 シュンはぎゅっと手を握りしめ、後ろを歩く妻に振り向いた。


 神々からの反撃か、豪雨、暴風、雷撃が尋常でないほど襲ってくる。並の者であれば瞬時にして地上へ振り落とされるだろう。そのなかにあって、ロニンはしっかりとした足取りで進んでいた。


「……平気か。ロニン」

「うん。もう、逃げてる場合じゃないから」

「……そうか」


 彼女は本当に強くなったと思う。

 ひとりではなにもできなかった、《魔王の娘》の頃とは大違いだ。彼女がいるだけで精神的な支えになる。


「シュンさんこそ……ごめんね。いつも前を歩いてもらって」

「気にすんな。黙ってついてこい」

「うん。ありがとう」

「…………」


 そんな会話を繰り広げている夫婦を、アルスは背後から無言で見守っていた。

 ――これほど有望な二人を、かつての俺は殺そうとしていたなんて……なんと愚かなことを――

 考えれば考えるほど、哀惜の念がちくりと胸を刺す。


 けれど。

 償いの道はまだ残っているはずだ。

 今度こそ、本当に世界を救うため、勇者として出来ることを全うしてみせる。そのときは、ぜひ力を貸してくださいね……師匠。


 三人、それぞれの想いを胸に、創造神の居座る神殿へ向かっていく。


 何分経っただろうか。

 無限にも思えた《虹の道》も終着点が見えてきた。


 雷雨が吹きすさぶ夜の天空。

 そこに巨大な城が浮かんでいる。閃光が走るたび、数秒だけ天空城の全容が垣間見える。


「ありゃあ……」

 シュンもぽかんと口を開けざるをえない。

 巨大だ。

 何万年、何億年――下手をすればそれ以上の年月、そこに存在し続けてたであろう神々の居城が、圧倒的な威容をもって浮かんでいる。


 近づいていくうち、シュンは気づいた。

 さきほどアリアンヌに転送された過去の神殿と、まるで同じ外観をしていると。

 であれば、神殿がいくら巨大とはいえ、道に迷うことはあるまい。アリアンヌの分身に、一通りの道筋は案内されたのである。


 ――ありがとな、アリアンヌ。後は任せてくれ――

 感謝の念を抱きながら、シュンはとうとう、神々のおわす神殿へと足を踏み入れた。


 世界消滅まで ――1:03――


よろしければ「評価」をくださると嬉しいです……

この下、「ポイント評価」という項目をクリックすれば評価できます。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ