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忠実すぎるがゆえに

 恐怖、恐怖、恐怖。


 ディストの頭にはそれしかなかった。


 あの膨大な魔力。

 大地が、地上そのものが、シュンの発する力に悲鳴をあげているようだった。


 願わくは、あの村人のステータスを見せてほしい。

 彼はいったいどれほどの魔法攻撃力を持っているのか。どれだけ規格外な人物なのか。


 ーー強い。

 適わない。

 勝てない。


 本能的にディストはそう察した。


 鍛錬を積めば追い抜けるとか、装備を整えればいいとか、そんな次元をはるかに超えている。


 あの村人には今後どうやっても勝てない。


 努力だけでは追いつけない《才能》という壁を、ディストはまざまざと見せつけられている気がした。


 ーー奴が要注意人物Bだと?


 馬鹿馬鹿しい。


 どこぞの勇者などよりも、あの村人のほうがはるかに脅威だ。


 勇者アルス程度であれば、ディストでもそこそこ闘える。

 村人の戦闘力は、そのレベルをはるかに飛び越えている。


 なのに。

 あそこまで驚異的な力を見せつけておきながら、村人は言う。どうやって魔法を使うのかーーなどと。


 なんて奇妙な話だ。

 圧倒的なステータスを持ちながら、これまで一度も魔法を使ったことがないというのか。


 あいつは一体、どんな人生を歩んできたのだ。


「デ、ディスト様……」


 近くにいたゴブリンが、青い顔で見上げてくる。その表情にはありありと恐怖が張り付いていた。


「撤退命令を……。《あれ》にはどうやっても勝てませぬ……」


 撤退。

 その言葉を、ディストは深く脳内に刻み込んだ。


「ロニン様を誘拐した男を前に……逃げるのか、この、俺が……」


「ディスト様、お気を確かに! お気持ちはわかりますが、いまは撤退しましょう! ロニン様を助ける前にディスト様がお亡くなりになられては仕方がありませぬ!」


 ゴブリンの言うことはどうしようもなく正論だった。

 いまは体勢を建て直し、改めてロニンの救出を狙う。そうするのが当然の措置だ。


 幸い、あの村人は本当に魔法の使い方がわからないようだから。


 けれど、ディストのプライドがそれを許さなかった。なぜならば。


「将来ロニン様と結ばれるのはこの俺なのだぁぁぁぁぁあ! あんな素性も知れない男に渡してなるものかぁぁぁぁぁぁあ!」


「デ、ディスト様……」


「ゴブリンどもよ。帰りたくば帰るがよい。俺はこの場に残る」


「……お、お言葉ですが、ディスト様、あなたはロニン様のことになるとまわりが見えなくなる。いまはーー」


「うるせぇ! わかってるぁそんなこと! はやく消えなきゃ、俺がてめェらをぶち殺すぞ!」

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