表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/263

ほんと、くっそめんどくせぇ

 俺の発言に、ディストは一瞬だけ身を強ばらせた。


「帰りたくない……だと? 嘘を言っては困るな」


「嘘じゃねーっての。疑うんならいつか勇者に聞いてみな」


「…………」


 正直、このくだりは言う必要がなかったかもしれない。

 ディストはまたも身を震わせると、右拳を握りしめ、力強く囁いた。


「ああ……ロニン様。こんな虚言男なぞに監禁され、さぞお辛いでしょうに……」


「いや、だから嘘じゃねぇってさっきかr」


「ですがもう心配ありませぬ! ロニン様! この正義の剣で、この忌まわしい男を切り刻んでやります!」


 そしてきっと俺を睨みつけるや、剣を振り払い、戦闘の体勢を取った。


「ふー……」


 シュンは深く息を吐いた。

 駄目だ。話が通じない。くっそめんどくせぇ。


 率直なところ、シュンにロニンを守る動機はなかった。このまま返してやってもいいくらいである。


 けれど。

 シュンの脳裏には、なにかが引っかかっていた。


 ディストほど忠実な臣下がいるならば、のこのこ魔王城に帰っても良かったではないか。


 そのほうが安全のはずだ。ロニンにとっては、俺なんかよりも、ディストのほうが信頼のおける存在のはずなのだから。


 俺と彼女は出会ってまだ一週間しか経っていない。


 それなのに、いったいなぜ俺との同居を望んだのか。

 わからない。いまは考えても詮無いことだ。


 ならば、彼女を一ヶ月間守り抜いて、立派な《引きこもり》に育て上げてやる。

 その約束をやり遂げるまでだ。


「ひゅうう……」


 シュンは小さく息を吸うと、全身の魔力を解放した。

 体内に熱いものがこみ上げてくる。

 我ながら底知れない力の胎動を感じる。


 世界が揺れ始めた。

 シュンから発せられる魔力に、大地が、草が、木々が、激しく振動する。


「おおおおっ!」


 我知らずシュンは叫んでいた。

 そうでもしなければ、溢れ出る魔力に身体が押しつぶしされそうだった。


 瞬間。


 シュンの全身から、真紅の魔力が霊気となって体現した。


 それは電流のようにシュンの周囲を包み込み、ディストやゴブリンたちを圧倒させた。


「こ……これは……。馬鹿な! この力が本当に村人だと!?」


 さっきまでの威勢はどこへやら、数歩後退するディスト。

 ゴブリンたちは恐慌をきたし、一斉にシュンから離れだす。


「あーやべえやべえ」


 自分の身体を見渡しながら、シュンはとぼけた声を発した。


「すまん。魔法なんて使うの初めてだからよ。……これからどうすりゃ魔法使えるのかな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ