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シュンの部 【最高位の天使】

「なんだ……いまのは……!」

 アグネ湿地帯。

 シュンは呆気に取られながら天使のテレパシーを聞いていた。ロニンも、そしてアリアンヌでさえも、一様に惚けた顔をしている。


「熾天使ミュウって言ってたよね。ミュウちゃんって……」

 かすれるようなロニンの声に、シュンは難しい顔で唸るしかなかった。


 ミュウ。孤児院にいた児童のうちのひとり。

 まさかとは思う。だが、いま脳内に直接聞こえてきた声は、まさに記憶にある彼女そのものだった。

 いったいなにがどうなっているのか。

 それを問いかけるべく、シュンはアリアンヌに目線を向けた。


 魔神と呼ばれた女は、かつて見たことないほど表情を歪ませ、小さい声量で呟いた。


「おかしい……なぜ天使たちのテレパシーがこっちまで聞こえた……まさか私たちですら創造神にとって玩具……」

「ん? おいおい、どうしたよ――」


 瞬間、アリアンヌははっと目を見開き、上空を仰いだ。


「ッ! 下がっててください!」

「…………!」

 いわく言い難い霊圧を感じ、シュンとロニンは後方に飛び退いた。


 コンマ数秒遅れて、二人のいた位置に漆黒の衝撃波とでも言うべき物体が襲ってきた。アグネ湿地帯で長年生きながらえてきた大樹が、いとも容易く切り刻まれ、微塵となって消える。


 ――なんだ、なにが起きた――

 シュンはさっと顔を上げ、そしてそこに信じ難いものを目撃した。


 神々しき天使――

 三対六の翼を仰々しく広げ、ゆっくりと地面に降りてくるさまは、まさに神のごとき風格。気のせいか、奴の周囲だけ薄い光の柱が降りているように見える。


 そして奴の正体もまた、明らかすぎるほどに明らかだった。


「なるほどな。てめぇもそっち側だったわけか。――ミュウ」

 ロニンを後ろ手に守りながら、シュンは相手を睨みつけた。 


 熾天使ミュウは完全に着地してから、

「あれー?」

 と素っ頓狂な声を発した。

「おっかしいな。いまので殺したはずなんだけどな」

 そこで初めてシュンとロニンに目を向ける。

「……あんたたち、思ったよりも強くなってるみたいだね。正直、いまの衝撃波を避けられるとは思わなかったよ」

「はん。ずいぶん偉そうな口を聞くようになったもんだな」


 言いながら、シュンは戦闘の構えを取った。数秒遅れて、魔王ロニンも剣を握り、ミュウの攻撃に備える。


「……やめておきなさい」

 そんな二人を制止する者がいた。魔神アリアンヌである。

 彼女はシュンとロニンの手前に移動し、ミュウとの前に立ちふさがった。

「奴は熾天使。《天使》のなかでも最高位の存在です。残念ですが、あなたたちではまだ勝てません」

「……それなら、あんたなら勝てるってのか?」

「…………」


 アリアンヌはそれには答えなかった。


「私は愚かでした。創造神とは世界を創りし存在。私の張った結界など破れて当たり前。なのに私も……《見せかけの鳥籠とりかご》でディストに娯楽を提供していたのですね」


「ま、そゆことね」


 ミュウはあくまで軽いノリでアリアンヌの発言を肯定した。


「あんたの張った結界なんて破るのは簡単。それでもあんたの策にハマまったフリをしてたってわけね。……ほら、あいつ性格悪いじゃん?」


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