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トルフィンの部 【困ったことになりました】

 トルフィンの視界で閃光が瞬いた。

 続いて、ゴゴゴゴ……とうねるような重低音が耳朶じだを刺激する。


 近くで落雷が発生したらしい。

 さっきまでの平穏な天候はどこへやら、突如、大雨の音までが聞こえてくる。


 それだけではない。

 なんの予兆もなしに、今度は強烈な震動が発生した。

 机や椅子などが、規則的に揺れ、そして倒れていく。トルフィンの前世でも何度かあった。相当大きめの地震だ。


「くっそ……」

 思わずトルフィンは呻き声を漏らす。


 いきなり訪れた、この天変地異。

 シュンやロニンでさえ、自在に天候を操作することまではできないはずだ。

 それを、熾天使ミュウと名乗る幼女は軽々とやってのけた。


 ――神に逆らうと、こんなことになっちゃうんだからっ――


 奴はさっき、確かにそう言った。

 恐らく気に入らなかったのだ。さきほどのトルフィンたちの発表が。だから対応策に打って出た。やっと安堵しかけていた人間たちを、さらなる絶望に落とし込むべく、ミュウは圧倒的なまでの力を見せつけてきたのだ。


 トルフィンたちは所詮、神の創り出した箱に生まれた玩具に過ぎない。その玩具が、親に勝てるわけがないと――無言で語ってきているようだった。


『うふふ。いい顔。苦しんでるね。いますぐ殺してあげ――』

『……ミュウ。何度言わせるのだ。私のめいをもう忘れたのかね』

『もう、わかったわよぉ。本当は王子とか王女とか、私の手で殺したかったんだけど……仕方ないか。あんたたちに任せるわ』


 というやり取りを最後に、天使たちの会話は途切れた。

 そして。

 トルフィンは気づいた。

 教室内に、いつの間にか異質な気配が混じっていることに。


 気合いを込め、顔を上げると、数名の天使たちがこちらに歩み寄ってきていることがわかった。

 どうやらここに《ワープ》でもしてきたらしい。

 奴らはみな勝ち誇ったような表情を浮かべ、それぞれの武器を高々と掲げている。こちらが動けないと油断しているようだが、残念ながらその通りだ。トルフィンはここから一歩たりとて移動することができない。


「ふふ……はははっ」

 トルフィンは思わず乾いた笑みを浮かべた。

「こりゃあ……困るなぁ……お呼びでない方々はちょっと……」


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