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トルフィンの部 【アルスさん】

 ――終わった……

 トルフィンはどさりと地面に寝転がり、大の字になった。

 自身の剣が音を立ててどこかに転がっていく。

 だが、このさい気にしていられない。それだけ神経のすり減る死闘だった。


「はぁ……はぁ……」

 目を向ければ、リュアも顔を落とし、荒い呼吸を繰り返している。そのまま震える手で剣を鞘に納めると、どさりと地に尻をついた。


 トルフィンは暗くなりかけた空に視線を戻し、片腕で両目を覆った。

 正直――死ぬかと思った。アルスが助けてくれなければ、十中八九、殺されていたと思う。


 それだけじゃない。

 今回の戦いで明らかになった。

 創造神たるディストは、望みさえすれば、いつでも俺たちを殺せるということだ。死んだ天使を蘇らせることもできるし、味方のステータスを跳ね上げることもできる。今回はオール七万で済んだものの、もしすべての数値が99999に達した敵が現れたら……さすがに勝てる気がしない。


 もし仮にそんな強敵が出現したら、この男とのコンビネーションが必要不可欠になるだろう。

 トルフィンは片腕を戻し、天使のいた空間をぽつんと見つめているアルスに目を向けた。


「マジで助かった……礼を言うぜ勇者さんよ」

 アルスはこちらを振り向くや、やれやれと言ったふうに肩を竦めた。

「いまの俺は勇者じゃない。勇者と名乗る資格がない」

「……でも、すごかったよ。強かった」

 と言ったのはリュアだった。武術大会でのことはともかく、助けてくれたことは素直に感謝しているようだ。


 アルスは気まずそうに髪をかきむしると、あー、その、なんだ、と言いながら目を逸らした。


「リュア。さっきの試合では済まなかった。生きていてよかった……本当に」

「もういいよ。いま助けてくれたからおあいこだもん」

「おあいこ、なのか……」


 引きつった笑いを浮かべるアルス。そのままなにかを考え込むかのように空を見上げ、目を閉じる。

 数秒後、ゆっくりと顔を下ろすと、今度はトルフィンに目を向けた。


「しかし驚いたな。ディストの奴、近々なにか仕掛けてくるとは思ったが……こんな派手にやってくるとは。世界中がこうなってるのか?」

「たぶんな。詳しいことは俺にもわからん」

「そうか……」


 アルスはこめかみの辺りを掻くと、言いづらそうに目線をしどろもどろさせた。


「その……俺で良ければ協力させてくれ。罪人ではあるがいまは緊急事態だし、一応は勇者と呼ばれていたし……」

「そりゃもちろん。俺は構わないが……」


 そこでトルフィンは言葉を切り、リュアに視線で問いかける。

 武術大会の準決勝にて、彼女はアルスに瀕死寸前にまで追いつめられた。彼女の許可も必要だろうと思ったのだ。


 トルフィンの視線の意味に気づくのが遅れたか、リュアは数秒後、こくこくと頷いた。


「……決まりだな。よろしく頼む。アルス……さん」

 寒気でも覚えたのか、アルスは途端に顔をしかめた。

「アルスでいい」

「ほらまあ、一応年上だし」

「気にするな。俺にはな」

「そっか。じゃお言葉に甘えて」


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