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あっ(察し)

「消えろ……か。はっ」


 ディストは鼻で笑うと、剣を抜き、切っ先をシュンに向けた。


「そういうわけにはいかんな。すべてはあのロニン様のためだ」


「……は?」


 シュンは数秒間たっぷり目をぱちくりさせたが、そういえばあの娘は魔王の子だったかと思い直す。


「泣かせるね。あのおてんば娘のために命を張ろうってのかい」


「馬鹿者! ロニン様を悪く言うな!」


 ぎっと眉根を寄せ、ディストはすさまじい剣幕で怒鳴り込む。


「可愛そうなお方なのだ……。ロニン様は俺が守らねばならない! そしてその(あかつき)にはッ、こ、婚姻を……!」


「あ、あー。そゆこと」


 なにかを察したかのように頷くシュン。

 ロニンはたしかに相当の美人だ。それに夢中になる猿がいても不思議はあるまい。


「それなのに!」


 ディストは自身の剣を抱きしめ、表情を歪めながら叫び出す。


「よもや人間なぞに誘拐されるとは! しかも相手は男だという! これを許しておけるものか! いいか村人よ、俺とロニン様は深い絆で結ばれているのだ! いまさらそれが引き裂けると思うなよ!」


「あー、うん。そうだね。その通りだ」


 なんだか馬鹿馬鹿しくなって、大げさに頷いてやるシュン。

 部下であるはずのゴブリンたちも、上司の怪奇っぷりにはいささか引いているように思えた。


 ディストはまたも剣の切っ先をシュンに向け、たったひとり、叫んだ。


「ゆえに! 村人よ、ロニン様を返してもらおうか!」


「ん、んー……」


 シュンはぼさぼさと後頭部を掻いた。

 正直なところ、ディストとわざわざ戦う理由はない。


 奴がそんなにロニンを欲しているなら、返せばいいだけの話だ。別にシュンは彼女に固執しているわけではない。


 だが。

 この問題の厄介なところは、ロニンがみずからシュンとの暮らしを望んだということ。


 なにか理由があるに違いあるまい。

 だからシュンも同じようにディストと敵対することにした。


「いや、別に返してほしいってんなら喜んで返すよ? けどな、あいつ帰りたくねえって言ってんだ。それを無理やり帰らせるわけにゃいかねえだろ」


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