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ゴブリンにはなにも見えませんでした

 モンスターの集団は、シュンの姿を認めるなり、ぴたりと進行を止めた。


 問答無用で襲いかかってこないあたり、すこしは話の通じる奴らなのかもしれないなーー


 そう思いながら、シュンも負けじと百体以上のゴブリンと相対した。


 それにしても、すごい数だ。


 率直に言って、負ける気はしない。


 けれど、大勢の子鬼に睨まれるのはあまり気分の良いものではない。


 そもそも、モンスターと戦うようになったのもつい最近のことだ。


 ただの村人だったシュンにとって、モンスターとは危険きわまりない存在。

 絶対に近寄ってはいけない相手だったのだ。


 とはいえ、こちらもレベル999だ。いくら多勢に無勢とはいえ、負ける気はしない。


 シュンは両拳をガツンと打ち付けた。かかってくるならかかってこい。


 ゴブリンはしばらくひそひそと互いの顔を見やっていたが、やがて、まったく異質の声が響いてきた。


「なにしてる。なぜ進軍を止めた」


「いや……それが……目の前に変な奴が……」


「変な奴……? どけ、間を空けろ」


 言われるままに、ゴブリンの隊列は左右に分かれた。


 その中央に現れたのは、ロニンと同様の、人型モンスター。

 黒い毛髪が、腰のあたりまで伸びている。

 色白の柔弱そうな顔立ちは女に見えなくもないが、奴の発した声質は、間違いなく男のそれだった。


「……なんだ、おまえは」


「さあ、な」


「とぼけるな。そのみずぼらしい格好。どこかの村の民か」


「へえ……やるじゃん」


 ひゅうとシュンは口を鳴らした。なかなか素晴らしい洞察力ではないか。


 そんなシュンの反応など意に介さず、男は続けて言った。


「なぜそこに立っているのか知らんが、生憎、我々にも用事があってな。邪魔するのなら問答無用で殺すぞ」


「やだね。死にたくねえよ」


「ならばどけ」


「断る」


「貴様……」


 人型モンスターは苛立ったようにぎろっと目を剥いた。


「素直にどけば生きて帰してやったものを……! おいおまえ、あの人間を始末してこい」


「へい」


 人型モンスターに命令され、一体のゴブリンが前に進み出た。

 げっへっへと醜悪な笑みを浮かべながら、シュンに金槌を先を向けてくる。


「てめェも馬鹿だな。自分の状況がまったくわかってねェようだ」


「ふん。そりゃあどうかな?」


 言うなり、シュンは大きく踏み込んだ。


 そのまま高速でゴブリンとの距離を詰めると、指先で左胸を突っついた。

 シュンにとってはほんの軽い一撃。

 だがそれは見事にゴブリンの急所を捉えた。


「かはっ……」


 そうしてゴブリンは、自分の身になにが起きたのかもわからぬまま、がっくりと膝を落とした。

 本当に、なにが起きたのか見えないまま。

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