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トルフィンの部 【ステータス操作】

 まさに危機一髪だった。

 突如現れた謎の天使。

 ――君たちも、ステータスを全部1にしてあげる――

 天使はそう言って右手を突き出した。


「なにを……言ってるんだ……」

 それしか言えないトルフィンだったが、しかし、脳内ではなんとなく察しがついていた。


 断続的に聞こえる外からの悲鳴。騎士たちの反撃もなにもなく、ただ闖入者ちんにゅうしゃにいいように蹂躙じゅうりんされている。

 ステータス、そしてスキルというゲームめいたシステム。

 記憶を失い、謎のステータスアップを遂げた元勇者。

 アルスは言っていた。

 ――リュア、貴様になら見せてやろう! 創造神の力をな!――

 ――これから気をつけろ。《奴ら》はひっそりとおまえたちに監視と支援をしている――


 ここまでヒントが出揃っていて、なにも察しがつかないトルフィンではなかった。だから本能が感じていた。目の前にいる天使の危険性を。このままでは自分たちの命が危ないことを。


「逃げろ! いますぐあいつから……!」

 そう叫んでトルフィンは走り出そうとするが、しかし、リュアの姿を見て足踏みした。

 彼女は動けない。

 だが、抱えて逃げられるような状況ではない。いったいどうすれば……!


 隣のセレスティアにちらりと視線を送る。彼女もこの場が危ないことに気づいているようだが、打開策は思い付いていないようだ。顔面蒼白で首を横に振る。


 くそったれめ……!

 かくなるうえは、最終手段しかない。

 トルフィンは剣の柄に右手を添え、天使へ向けて猛然と駆けだした。アルスとの激闘によって疲れた両足が、抗議の痛みを発する。情けないスピードで走る自分自身に、トルフィンは思わず舌打ちをかました。反対に天使は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


「ふふ、無駄だよ……。ステータスを1にしてしまえば、君たちなんて……」

 瞬間。

「うおっ……」

 トルフィンは思わず呻いた。全身から徐々に力が抜けていく。HPすらも少しずつ減っていく。本当にステータスそのものがいじられている……


 このままでは天使に攻撃さえ届かない。俺の命もここまでか――


 トルフィンが諦めかけたとき、ふいに、彼の全身を青い光の柱が包み込んだ。

 トルフィンだけじゃない。リュアとセレスティアまでが、同じように光に覆い尽くされた。見ていてどこか安心するような、優しげな輝き。


 ――なんだ、これは……!

 トルフィンは気づいた。

 抜かれていた全身の力が、いつの間にか元に戻っていることに。HPも元通りだ。ステータスが下げられているようすはない。


「えっ、どういうこと……?」

 今度は天使が驚く番だった。《神の霊気》を持たない彼らに、なぜかステータス操作が効かないからである。


 そしてこの絶好の機会を逃すトルフィンではなかった。

「おおおおおっ!」

 いまだ呆然としている天使へ向けて、トルフィンは全力で剣を振るった。


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