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深まっていく謎

「……ちっ」

 アルスは不愉快そうに服をはたく。いまの魔法は完全に予想外だったのだろう、腕の部分がただれてしまっている。

 ――なんとか生き延びられたか。

 トルフィンは大きく息を吐き、そして再び戦闘に意識を集中した。いまのところはなんとか戦えている。だが素のステータスで負けている以上、それもいつまで続くかわからない。


「ふん。油断したか」

 アルスの表情が若干険しさを増した。さっきまでの余裕っぷりはもう窺えない。

「いい気になるなよ小僧。この焼けた服の分は仕返しさせてもらう」

「……その前にひとつ聞かせてくれ。おまえは元勇者だろ? なんで人類滅亡なんて企むんだ」


 そこでアルスはうんざりしたように息を吐いた。


「またその質問か。何度も言っているだろう。答える義理はないとな」

「違う! 本当のことを言え!」

 いきなり声を荒らげたトルフィンに、アルスは

「なんだと?」

 と眉をひくつかせた。

「おまえはただ、《答えられない》だけだ! なぜ自分がこんなに強くなっているのか、どうして人類を滅ぼそうとしているのか……本当はわからないんだ!」


 アルスの表情が一瞬だけ揺らぐ。


「……さあな。なにを言っているんだ貴様は」

「答えてみろ。おまえの必殺技は本当に黒真剣こくしんけんなのか? 他の技じゃなかったのか?」

「…………」

「なのに、父上への恨みだけはリアルに覚えているようだな。答えろ。これはいったいどういうことだ!?」

「やかましい!」


 唐突にアルスが激しく顔を歪め、騒いだ。


「さっきも言ったろう! 俺の目的は村人に復讐し、人類を滅ぼすことだ! それ以外はどうでもよい!」

「そんなことないでしょう」


 ふいに会話に割り入ってくる者がいた。

 いつの間にかシュンの隣に並んでいた王女セレスティアが、胸元に手を添えながら言った。


「あなたは不器用なれど、誠実で真っ直ぐな人だった。人類を滅ぼしたいだなんて……そんなことを言う人ではなかった!」

 しかしアルスの返答は冷ややかだった。ちらりとセレスティアを一瞥いちべつすると、たった一言、

「誰だ貴様は」

 と言い放った。


 これにはセレスティアも、そしてシュンも驚愕せざるをえなかった。目を丸くし、アルスに問いかける。

「……私のことを忘れたのですか? 昔、何度も護衛してくれたではありませんか!」

「……馬鹿馬鹿しい。俺は過去に興味がない」


 嘘だ――とトルフィンは思った。

 アルスは演技が下手だ。さっきから動揺が顔に出ている。そこのところも、セレスティアの言う《不器用なれど誠実な人》にぴたりと当てはまる。


 この戦い……アルスを倒しただけでは終わりそうもない。

「さあいくぞ勇者! ステータスの差なんか、俺がひっくり返してやる!」

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