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一回戦 2

 トルフィンたちが姿を見せると、観客たちの歓声がいっそう強くなった。トルフィンはもちろん、相手の魔術師もそこそこ名の通った実力者なのだ。興奮するのも無理はない。


「あれが……トルフィン様……」

「シュン国王に似て、ものすごく強いんだとか……」

「きゃートルフィン様ー!」


 女の声援にぎょっとした。振り向くと、シュロン学園の女生徒たちが黄色い声をあげている。手の込んだことに、「トルフィン王子」と書かれた垂れ幕まで作ってくれたようだ。



 乾いた笑みを浮かべつつ、トルフィンは手を振って応じる。するとまた、キャーなどという声援が上がる。


「ずいぶん人気者ですな。トルフィン殿」

「僕が王子だからですよ。みんな玉の輿に乗りたいんだ」

「……はて、私にはそれだけじゃないように思えますがね」

「さあ、なんのことだかさっぱり」

 肩をすくめるトルフィンに、魔術師も苦い笑いを浮かべる。


 ちらりと視線をずらすと、ある一カ所のみ、一般席からは隔絶された観客席があった。そこにシュンとロニン、セレスティアが座っている。ロニンがぶんぶん両手を振ってきているので、トルフィンも手を振り返した。


「さあ、では選手の紹介を致しましょう! まずはご存知、トルフィン選手です!」


 またしてもキャーという声援。


「トルフィン選手はシュロン国の王子であり、六歳児ながらも予選を勝ち抜きました! しかもほぼ一発ノックアウト! これは期待が持てそうです!」


 トルフィン様ー! と、また女児たちが叫んでくる。こんなに好かれるのは正直悪い気がしないが、すこし恥ずかしい。


「続いて、こちらはレクス選手です! 現在、セレスティア王女様の護衛を勤めておられ、実力は確かです!」


 審判の紹介と同時に、緑のローブを着た人間たちが盛大な拍手をかましてきた。しかもかなりの人数だ。やはりこのレクスという男、魔術師のなかでも有名人に違いあるまい。


「さあ、両者かまえー!」

 審判の声が響くや、トルフィンは気を引き締め、戦闘の構えを取った。レクスもやや腰を落とし、こちらからの攻撃に備えている。

 ドン、ドン、と聞こえてくるのは、ゴングの音だろうか。

 なんでもいい。いまはレクスの動きに注意していたい。


「はじめー!」

 審判の声と同時に、ガーン! という金属音が鳴り響いた。試合開始の合図だ。


 トルフィンは全力で地を蹴った。

 地面に足をつけず、ほぼ飛んでいるに等しいスピード。視界がみるみるうちに流れていく。

 そのまま抜きざまの一撃を、レクスに見舞う。


 が――


「……!?」

 攻撃が命中するギリギリのところで、トルフィンは引かざるをえなかった。細い水流が、いくつもの柱となってレクスを包みだしたからだ。初めて見る技だが、触れればただでは済まないことが容易に想像できる。


「こ、これは……?」

 目を見開くトルフィンに、レクスは片頬を吊り上げて答えた。

「ウォーター・ベール。その名の通り水の壁です。攻防一体のこの技……トルフィン殿は突破できますかな?」


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