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声が聞こえないように

「ねえ、トルフィンくん」

「なんだ」

「寝れない」

「知るか」

「ひ、ひどい……」


 真夜中。

 トルフィンはリュアと同じベッドで眠っていた。

 明日は武術大会の本戦だし、存分に休養を取らないといけない。


 にも関わらず、二人ともなかなか寝付けなかった。


 その理由は明白である。

 さきほどのリュアの告白だ。


「ねえトルフィンくん、結婚したらどんな家に住む?」

「……話がはえーよ」

「えー、いいじゃん」

「マジで言うと、シュロンの王城に住むことになるだろうよ。二人で新築を……ってことにはならない」

「もう」

 リュアがむすっと唇を尖らせる。

「ほんとに冷めてるんだから。でも、お城にずっと住むのもいいね……」


 さすがは六歳児。思考がお姫様だ。

 でも、そんなリュアと関わったからこそ、トルフィンも変わったのかもしれない。


 前世では《引きこもりニート》でしかなかったトルフィン。人と関わる楽しさなどすっかり忘れていた。ずっと一人で生きていくことを望んでいた。


 そんな元ニートが、前向きに学園なんぞに通い、しかも武術大会の予選を勝ち抜いてしまった。それは疑いようもなく、リュアという存在があったからだ。


 リュアを好いたきっかけは《ロリコンだから》だった。

 けれど、いまはそれだけじゃない。

 ひとりの人間として、リュアを守ってやりたい。

 素直にそう思えた。


 トルフィンは寝返りを打ち、リュアと目線を合わせた。「あっ」と頬を染める彼女の頭を、優しく撫でてみる。

「……いま大人たちがなにを話してるか、わかるか?」

「……わかんない」

「世界の危機について話してるのさ。おまえは気づいてないかもしれないが、いま、ちょっと危ねえ状況なんだよ」

「そ、そうなの?」

「ああ」

 そこでトルフィンはまっすぐにリュアを見据えた。

「だが、おまえだけは俺が守ってみせるよ。父に比べればまだ未熟だがな」


 次の瞬間、リュアは天使の笑みを浮かべた。


「ほんと? 守ってくれる?」

「ああ。絶対だ」

「じゃ、やくそく」


 言いながら、リュアは小指を差し出してきた。指切りげんまんをしようと言っているのだ。

 思わず苦笑しながら、トルフィンも小指を出す。こんな子どもっぽいことをやるのは実に何年ぶりか。


 トルフィンとリュアは、声が外に漏れないよう、小さな声で誓いを立てた。


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