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21年分のDTを

 可愛い幼女と二人で寝る。

 またしてもこんなシチュエーションに恵まれるとは、トルフィンとて予想外だった。

 王都の夕飯を逃すのは痛いが、ここは食欲よりも優先すべきものがあるだろう。


 ――でも。

 最近はリュアに対して、そこまで下世話な欲を抱かなくなった。ロリコンという性癖は変わらないが、彼女をひとりの人間として守ってあげたい、幸せにしてあげたい……そんな健全な気持ちのほうが強い。


 変わっちまったな、俺も……

 ひとり苦笑しながら、トルフィンは案内された部屋を見回した。


 さすがは歴史の長い王都の城というだけあって、シュロン城の客室より豪勢である。ふかふかそうなダブルベッドには、汚れひとつないレースカーテンがついている。なんだかちょっとエロく感じてしまうのは、心が汚れているからか。


 床には心地良いマットが敷き詰められ、部屋全体には甘い香りが漂っている。前世でいうアロマでも置いてあるのだろうか。

 そんなことを考えながら、トルフィンは隣にたたずむリュアに話しかけた。


「さ、眠いんだろ? さっさと寝ようぜ」

「…………」


 しかし彼女はまったく動こうとしない。さっきのセレスティアよりも顔を赤くしながら、何事かを呟いている。


「どうしたよ。また恥ずかしくなったのか?」

「ううん、そうじゃ、なくて、えっと……」

 なおも迷っていたようだが、リュアは意を決したように、弱々しく言った。

「ごめん。あのね、嘘なの……。私、本当は眠くない……」

「……は?」


 なぜそんな意味のない嘘をついたのか。それを視線で問うと、リュアはさらに顔を赤くした。


「ごめんね。私、あなたと二人になりたくて、それで……」

「えっ……」


 おい、ちょ、待て。

 なんだこの展開。

 おかしい。絶対おかしいって。

 混乱するトルフィンだが、リュアはもっと混乱しているようだった。はにかみながらも、しっかり聞き取れる声量で続けた。


「ほんとは大会が終わったら言いたかったんだけど……でも……」

 そういえば予選前になんだか意味深なことを言っていた気がする。あれの意味って、まさかそういう……

「最初は初めての友達って感じだったけど……何度も一緒に修行して、仲良くなって、手も繋いで……そしたら、あの……」

「は、はあ……。そういうこと、ですか……」


 なぜだか敬語になってしまうトルフィン。


「変だよね……。私、自分でもなにがしたいのかわかんない……。でも、あの……」

 しどろもどろになるリュアを、これ以上眺めていられなかった。

 ほぼ無意識のうちに、トルフィンはその桜色の唇をふさいだ。

「あっ……」

 かすれ声を発するリュア。


 しばし柔らかな感触を共有したのち、トルフィンは小さく言い放った。

「いまのは、前世を含めてもファーストキスだ」

「えっ……?」

「な、なんでもねえよ。忘れてくれ」



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