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予兆2

「な……っ!」

 トルフィンは思い切り目を見開き、そして激しく喘いだ。


 ――転生者。

 聞き違えるであろうはずがない。

 たしかに奴はそう言った。

 それは国王シュンと、妻ロニンしか知らないはずだ。リュアにすらすべての事情を打ち明けていない。


 なのに、こいつは知っている。

 初めて会ったはずの、この男が。


「なぜ……それを……」

 かすれ声でそう尋ねるのがやっとだった。

 勇者アルスは気取ったように両目を閉じると、意味深に

「あなたが知る必要はありません」

 とだけ言った。

「ともかく、シュン国王に伝えておいてください。あなたに会うのを楽しみにしていると――」

 最後に気障なウインクを決めると、勇者アルスはいずこかへと歩き去っていった。


 その後ろ姿を、トルフィンはただ呆然と眺めることしかできなかった。


 ――勇者アルス。

 いったい何者だ。

 あの性格はいかにも勇者らしくないし、トルフィンが転生者であることも知っていた。また、過去のシュンの発言を思い出しても、勇者の実力はそれほどでもなかったはずだ。だがさっきの戦いを見るに、奴のステータスは相当なレベルにまで高まっている。


 なにがどうなっているのか、いくら考えてもわからない。

 ただ、ひとつだけ言えることは、勇者アルスがおそらく最近の《異変》に関わっているかもしれないと……なんとなくそう感じた。


 ちらりと、アルスの去った方向に目をやる。

 奴は《一区分》の舞台にいた。予選の時点では、トルフィンともリュアとも被らない。


 ――厄介なことにならなきゃいいがな……


 そう思いながら、トルフィンは意識を予選試合に戻した。アルスは本戦が云々と言っていたが、そもそも予選を通過できるかもわからない。ここで油断するわけにはいかない。



 かくして、トルフィンは淡々と予選試合をこなしていった。

《引きこもり》たるトルフィンに適う者はこの時点で存在しなかった。予選の最終戦すらも、トルフィンはすんなりと勝利を飾った。リュアと勇者アルスも同様に、苦労なく予選を勝ち抜けた。


 そのようにして、トルフィン、リュア、勇者アルスの本戦出場が決定した。


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