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わけがわからなくなってきた

 ――なんなんだ、あいつは……


 アルス。

 どこかで聞いたことのある名前である。

 そういえば、シュンとロニンの会話から、そのような名前が出てきたかもしれない。


 ――勇者アルス。

 たしかそんなふうに言っていたような……


 トルフィンがそう考えている間に、二十秒が経過していたらしい。アルスはふっと笑いを浮かべると、すとんと手の力を抜いた。解放された対戦者が力なく地面に転がり落ちる。


「だ、大丈夫ですか!?」

 ようすを確認しにいった審判の表情がさっと青ざめる。

「か、かろうじて息がある……でも、これは……」

「さっきも言ったろう。殺してはいない。心配なら手当でもすればいい」

「アルス選手……。人類の希望と言われたあなたが……なぜ……」

「その時代は終わったのだよ。さあ、試合はどちらの勝利かな」


 審判はしばらく苦々しい表情をしていたが、対戦者の無事を確認したのだろう、片手を挙げて判決を下した。


「勝者……アルス選手!」

「ふん。最初からそうしていればいいのだよ」


 勇者アルスはそう吐き捨てると、ちらりと――トルフィンに目を向けた。

 なんだ、こっちに来るのか――!

 思わずさっと身構えるトルフィン。

 彼とは面識がないし、よもや襲ってくるとは思えないが、どうしても警戒せざるをえない。


 ――あいつは異常だ。どこかがおかしい……


 果たして、勇者アルスはトルフィンの至近距離にまで距離を詰めてきた。六歳児と比べればかなりの身長差があり、だからトルフィンは見上げる格好となった。


 おそれをなしたのか、周囲の選手たちもトルフィンたちと距離を置き始めた。そのようすに笑いを浮かべるや、アルスは口を開いた。


「お初にお目にかかる。私はアルスと申します。一昔ひとむかし前は勇者などと呼ばれていました。あなたは……国王シュンのご子息ですね」

「……父上と面識があるのですか」

「それはもう。昔からね」

 アルスはそこで一呼吸置くと、もう一度、にたりと笑い出した。

「優勝者には国王シュンと対面できると窺っています。楽しみですよ」


 そう。

 優勝者には、シュンじきじきに賞品を手渡すことになっている。

 ということは、こいつの目的はシュンなのか。賞品が欲しくて参加したようには見えない。


「トルフィン殿。あなたと本戦で戦うのを楽しみにしています。転生者のあなたならば、さぞ面白い戦い方をしてくれることでしょう」


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