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隠された優しさ

「んで、おまえはいつまで村にいるつもりだ」


 暗い空気を変えるつもりで、シュンは聞いてみた。


 ロニンはパンを頬張るのをやめ、うーんと唸った。


「どうしようかなぁ……」


「……考えてなかったのかよ」


「でも、とりあえずは勇者と互角に闘えるくらいには強くなりたい。それまではお世話になっても……いいかな?」


 あまりにも直球な問いかけに、シュンは薄く笑った。


「俺に人類滅亡の手助けをしろってのか?」


「え……?」


「さすがにそこまでは面倒みきれねえよ。《引きこもり》になるまでは世話してやるから、それまでに自分がなにしたいか考えな」


「う……うん」


 突き放したようなシュンの発言に、ロニンは小さく頷いた。


 そう。

 シュンとロニンの関係は、偶然に偶然が重なった結果だ。


 本来ならば、人間とモンスターが共同で生活するなんてありえぬこと。


 きっと他の者に気づかれたら、晒し者にされた挙げ句、村から追い出されるだろう。ひょっとしたら殺されるかもしれない。


 そんな爆弾を喜んで抱えてやれるほど、シュンはお人好しではなかった。


 ーーやれやれ。


 シュンはまたもため息をついた。

 空気を変えるつもりが、またも暗い雰囲気になってしまった。


 もし。

 願って詮無いことであるが、ロニンが人間であったなら。

 このような面倒くさい悩みも起きなかったものを。


 長い沈黙の末、ロニンが気遣うように言ってきた。


「お兄ちゃん。私は大丈夫だよ」


「……は?」


「私がそんなに望むほうがおかしいよね。だってモンスターだもん。だからそんなに悲しい顔しないで」


 悲しい顔、だと……?


「してねえよ。誰が悲しむか」


「えっ、だって……」


「うるせー。ほら、さっさと出るぞ」


 ロニンの額を軽く小突き、シュンは逃げるように店から出た。


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