表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/263

強くなりすぎて悩むとか中二かよ

 たっぷり数秒間、沈黙が続いた。

 誰もがぽかんと口を開けている。


 それだけ衝撃的だったのだ。まだ六歳の子どもが、大人をたった一撃で仕留めたことに。しかも、その六歳児が明らかに手を抜いていたことは、誰の目にも明らかであった。


「しょ、勝者……トルフィン選手」

 さすがに動揺したのか、審判も震えた声で判決を下す。


 トルフィンはまた両手を合わせ、場外に落ちたアーレに一礼すると、ちょこちょこと舞台から降りた。アーレは尻餅をついたまましばらく呆然としていたが、やがて周囲の視線に耐えられなくなったのか、とぼとぼと会場から去っていった。


「では次の試合です。トーレ選手と……」


 審判のアナウンスを聞きながら、トルフィンは罪悪感に苛まれていた。

 いささかやりすぎたかもしれない。大人たちのメンツもあるだろうし、次回からはもうちょっと手を抜いたほうがいいだろう。どうやら思った以上に、俺は強くなりすぎてしまったらしい。


「おおおおおおお!」

 別のところで歓声があがった。


 振り返ってみると、リュアが対戦者をノックアウトしているところだった。どうやら彼女も圧勝してしまったらしい。勝ったリュア自身が一番当惑しており、きょろきょろと周囲を見回している。


 想像以上に修行の効果が現れているようだ。トルフィンもリュアも、もはや一般の戦士では太刀打ちできないほどに強くなっている。それはそれで嬉しいが、まだ幼い子どもとして、大人たちのプライドだけは守ってあげなければなるまい。


 そう思いながらトルフィンが視線を戻したとき――


「アルス選手! アルス選手! とどまりなさい!」


 また別の舞台から、審判の怒鳴り声が聞こえた。


 見れば、アルスと呼ばれた選手が、屈強な戦士の首を両手で持ち上げている。

 その光景を見たとき、トルフィンは全身に怖ぞ気が走るのを感じた。

 戦士のほうはだいぶ苦しそうだ。顔がずいぶんと青白い。このままでは――


「アルス選手! 辞めなさい! 殺人は失格ですよ!」

「殺人……? おかしなことを言う」

 ぎゅう、と。

 対戦者の首をさらに強く握り締めながら、アルスは落ち着き払った声を発した。

「この男はまだ二十秒耐えられる。殺しはしない。死を迎えるギリギリまで、存分に苦しんでもらうのだよ」

「し、しかし……!」

「ルールは破っていない。なにか問題があるのか?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ