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剣士たちの戦い

 予選が始まった。

 トルフィンたち《七区分》に振られた選手たちが、石畳の前に集まっている。


 各ブロックにおいて、それぞれ審判が存在するらしい。立派な顎髭あごひげを生やした老齢な男性が、張りのある声で告げる。

「えー、大会を始める前に予選のルールをお伝え致します。聞き逃すことのないように」


 審判が述べたルールは、おおむね以下のものだった。


 ・相手を気絶させたら勝ち

 ・相手を場外に落としたら勝ち

 ・殺人は禁止。対戦者を殺した場合、即刻試合は中止となり、騎士たちに逮捕される。

 ・武器の使用はOK。

 

「では予選を開始します。非常に長くなりますので、試合時間までは自由にしていただいて構いません。二つ前の試合が終わりましたら、こちらから選手名をアナウンスさせていただきます」


 ――なるほど、そういうシステムか。まあそうでもしないと退屈で死ぬもんな。


 このままリュアの元へ行ってもよかったが、トルフィンは試合を眺めることに決めた。自分のブロックにどんな対戦者がいるか、偵察しておくことも重要だ。


 審判により、二人の選手の名がアナウンスされた。呼ばれた男たちが石畳の上に姿を現す。

 両者とも剣士タイプのようだった。油断なく剣を構えながら、試合の開始を待っている。その緊迫した雰囲気に呑まれ、トルフィンも思わず息を呑んだ。


「では、始めー!」

 審判の声と同時、二人の剣士が地を蹴った。


 ガキン、ガキン!

 と、目にも止めらぬ剣の応酬が繰り広げられる。選手の友人らしい男たちが、「刺せー!」「ぶっ殺せー!」などと物騒な歓声をあげている。


 決着は意外と早かった。鍛錬を怠ったのか、ひとりの戦士がスタミナ切れを起こしたのだ。動きが鈍くなったその隙を、対戦者は的確に突いた。


「おおおおっ!」

 会心の切り込みが、スタミナ切れの戦士の足に命中する。見事に鎧ごと切り裂いたようだ。あれでは動けまい。

 審判もそのように判断したのか、大きく笛を鳴らし、試合決着の合図を告げた。


「勝者、キンツ選手!」


 おおおおお! という歓声が周囲に沸いた。キンツと呼ばれた選手は、それらの声に手を振って答えると、うずくまる敗戦者に手を差し伸べた。


 敗戦者の顔は暗かったが、やがて苦笑いを浮かべると、「完敗です」と言ってその手を取った。

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