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お泊まりコース

「すごーい……」

「すごーい……」

 王城に招待されたリュアとレイアは、開口一番、まったく同じことを呟いた。


 シュロン国王城。

 正面入口しょうめんいりぐちの二枚扉を開け放ったシュン一行を、大勢の騎士たちが出迎えた。赤い絨毯じゅうたんを挟んで、綺麗に二列に整列している。


 国王シュンは煩わしそうに後頭部を掻いた。

「……まためんどくせえ《出迎え》なんかやりやがって。いいっての、こんなのは」

「いえいえ、そういうわけには参りませぬ」


 そう言って颯爽と登場したのは騎士長ゴルムだった。銀色の甲冑かっちゅうをガツガツと鳴らしながら、シュンとトルフィンに一礼する。


「この城は権威の象徴。いわば、民に王への忠誠を誓わせるための記号なのですよ」

「はいはい、わかってるっての。毎回ありがとな」

「はっ、ありがたき幸せであります!」

 再び騎士長が深々と頭を下げる。それに習い、他の騎士たちも頭を下げた。


「はぁあ……シュン様素敵……」

 両手を組み、レイアが見当違いの独り言をつぶやく。


 コホン、と咳払いすると、ゴルムは改めてリュアに目を移し、そしてシュンに顔を戻した。

「なぜうちの娘がいるのです?」

「いや。みんなでメシでもと思ってな」

「それはそれは……大変助かります。今日は嫁が王都に出かけてまして、私が帰るまで夕飯を用意できなかったものですから……」

「なに? 家に誰もいないのか?」

「はい」

「そりゃ可愛そうに。寂しいだろ?」


 いきなり話を振られ、リュアはガチガチに固まった。


「え、えええええっと、大丈夫じゃないかもしれないです、はい!」

「じゃあウチに泊まってけよ。部屋なら無駄に多いからな」


 ――おいおい……!

 話を聞きながら、トルフィンは心中で突っ込みを入れた。

 マジですか。出会って二日目でお泊まりですか。二人きりじゃないけど。


「シュン様、私もお泊まりで……!」

「んあ? 泊まりたいなら好きにしろよ」

「はああん。ありがとうございます!」


 ついでにレイア先生もついてきた。

 夕飯だけのはずが、まさかのお泊まりという事態に。ついていけないな――とトルフィンは思った。


「さ、立ち話もなんだ。みんなでメシにしようぜ」


 

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