幼女の反則的な仕草
トルフィンとリュアはしばらく修行に打ち込んでいた。
シュロン学園の校庭は広い。
いくら魔法をぶっ放そうが、問題なく修行に興じることができる。最も、トルフィンの魔術が成長したらどうなるかわからないが。
そうして、夕日も沈みかけた頃――
「おお、やってんな」
ふいにシュン国王が姿を現した。ワープでここまでやってきたようだ。
と、さっきまで堂々と戦いを見守っていたレイア先生が、急にうろたえ始める。
「シ、シュン様……! な、なななぜここに!?」
「ん? そりゃ、校長室で仕事してたらドンパチの音がしてたからな。気になって来ただけさ」
「そ、そそそうですか……」
すっかり萎縮してしまうレイア。動揺しているときでも乳が揺れているところはさすがである。
「おまえがトルフィンと……ゴルムの娘さんを鍛えてくれてたのか。ありがとな。本来の仕事じゃねえのに」
「い、いえっ、シュン様に感謝されるなんて恐縮ですっ」
「だが、もうそろそろ日も暮れる。悪いが今日のところはお開きにしてくんねえかね」
言いながら、シュンはちらりとトルフィンを見やった。まるで、これ以上無理をしても意味がないとでも言いたげだ。
正直助かった。本音を言えば、そろそろ帰りたかったところである。
しかし次の瞬間、シュンはとんでもないことを言い出した。
「レイアと、それから、えーっと……」
「リュ、リュアと申します」
「ああそうだ。レイアもリュアも、これから一緒に飯にしようぜ。城に招待する」
「なっ……!」
トルフィンは思わず目を見開いた。
どういうことだ。
学園にいるとき以外は、家に引きこもるべきではなかったのか。
そんなトルフィンの動揺に気づいたのか、シュンはリュアに向けて、意味深なセリフを述べた。
「おまえが仲良くしてくれれば、トルフィンのやる気もあがるんだ。いいよな? 城にはゴルムもいるし」
「は、はい、私はその、いいですけど……」
「行きます行きます!」
快諾するリュアとレイアだった。
余計な世話を……!
トルフィンはシュンをちょっとだけ睨みつけた。
しかし、リュアに「いこ?」と手を差し出され、数秒後にはそんな怒りなど吹き飛んでしまっているのであった。




