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トルフィンくんすごーい

 学園は武術大会の話題で持ちきりだった。


 そりゃそうだろう。

 たぶん、建国以降初めてのビッグイベントだ。これに興奮しない者はいまい。ことに男児は喜びを隠せないようで、戦いごっこに興じている生徒もちらほら見られる。そして幼女たちが彼らを冷めた目で眺めているところも、もはや様式美である。


 人界と合わせて優秀な戦士を決定するのだから、嬉しくなるのも当然か。男の夢だよな……

 そんなことを考えながら教室に入ると、突如、

「あ、トルフィンくんだ!」

 と叫ばれた。


「え?」


 目をぱちくりさせている間に、数名の女児たちがトルフィンに歩み寄ってくる。母親にでも仕込まれたのか、幼いながらも魅惑的な上目遣いを仕掛けてくる生徒もいた。


「……え、何事?」

「トルフィンくん、その、武術大会に出るんだよね!」

「あ、ああ。その予定だが……」

「すごーい! 大人たちに混じって戦うってことでしょ?」

「ま、まあそうなるかな」

「そうだよね! ほんとすごいよ!」

「そりゃどうも。あっははは」

 後頭部を掻きながら、トルフィンはぎこちない笑みを浮かべた。


 やたらとすごーいと誉めてくるのも、たぶん親に仕向けられたんだろう。男は単純だからな。前世では、よく目が合うってだけでこいつ俺に惚れているんじゃないかと思ったものだ。

 しかし悲しいかな、トルフィンは彼女らより二十一年も多く生きている。こんな単純な手にはかからない。


 なおもすり寄ってくる幼女たちをうまく避けつつ、トルフィンは自分の席に向かう。

「むう。やっぱりトルフィンくんモテモテ……」

 隣のリュアはすでに登校していたようだ。なぜかちょっとだけ頬を膨らませている。

「何度も言わせるなっての。こんなのはモテてるとは言わねえよ」


 彼女たちの場合、トルフィンが好きなのではなく、トルフィンの《権力》が好きなだけだ。それではさすがに嬉しくない。


「でもトルフィンくん、武術大会にはほんとに出るんでしょ?」

「……まあな。父上からそう頼まれた」

「そう……。できれば、トルフィンくんとは戦いたくないな」

「……えっ」


 ――まさか。

 目を点にするトルフィンに、リュアは衝撃的な発言を放った。


「私も出るの。武術大会」

「マ……マジで?」

「うん。お父さんが出てみなさいって」


 ゴルム騎士長の指示か。

 たしかにリュアは強い。大人たちとも遜色なく戦えるであろう。しかし、さすがに武術大会とは……


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