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戦乱の予兆

 事態は急転する。

 きたるべき大戦に備えて――


  ★


「ぎゃあ!」

「た、助けてくれ!」


 人々が逃げ惑っている。

 業火。死体。崩れた建物。


 数時間前までは比較的大きな村だったそこは、いまや完全なる恐慌に陥っていた。


 誰もが逃げ惑っていた。

 さもなくば殺されるから。散々になぶられた挙げ句、無慈悲に斬り殺されてしまうから。

 さっきまで平和だった村は、たったひとりの闖入者ちんにゅうしゃによって、壊滅寸前にまで追いつめられていた。


 村人たちは知っていた。その闖入者が何者であるかを。


「ゆ……勇者アルス様! な、なぜこのような……!」

 ひとりの村人が叫ぶ。

「人類の《希望の星》と言われた貴方が、なぜ村を襲うのですか! ま……まるで悪魔だ!」


「俺が悪魔……? くっ、くっくく……」

 勇者アルスと呼ばれた青年は、血に塗れた剣を振り払いながら、暗い笑みを浮かべてみせた。

「違うな。俺は勇者。世界に希望を与える者なり!」


「な……なにを訳のわからないことを!」

「ふん。人間ごときが理解できずとも結構」


 勇者アルスは笑いを引っ込め、左手の指を村人に突き刺した。

 ぬめり。

 生々しい音とともに、勇者の指が村人の目を容赦なく潰してみせた。

 あまりの激痛に、村人が顔面をおさえ、獣のごとく吠え出す。そんな彼を見て、勇者はなおも、ニタリと暗い笑みを浮かべた。


「……もろいな。所詮は人間。この程度だということか」


 ずしゃっ。

 勇者の振り払った剣先が、的確に村人の首を捉えた。

 直後、おびただしいまでの鮮血と同時に、村人の顔がいずこかへと飛んでいく。


「くっ。くくくっ。俺は最強の力を手に入れた。もう誰にも負けはせぬ」


 勇者アルスは血塗れた剣を美味そうに舐め上げると、再びくくくっと笑った。


「貴様の故郷は潰してやったぞ。驚き、狼狽ろうばいする姿を見るのが楽しみだ……なあ、村人シュンよ」


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