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初めてのパン屋さん

 ーー俺の村って、けっこう広かったんだな。


 故郷のことながら、シュンは感心せずにいられない。


 中央には噴水広場があり、色とりどりの花々が美しさを演出している。


 人口はだいたい三百人ほど。


 あちこちで、露店の宣伝をする者、走りまわる子どもたちが見られる。


 都市部には適わないだろうが、それなりの賑やかさがあった。


 それでいて緑も豊かなのだから、案外住みやすい村なのかもしれない。人口が多めなのも納得がいく。


「わーすごい!」


 ロニンにとっても、人間の村は新鮮に映るのだろう。明るい顔で騒ぎまくっている。


「ねえねえお兄ちゃん、あれはなに?」


「ん?」


 ロニンの指し示した方向にはーーパブと書かれた怪しげな建築物。


 シュンはコホンと咳払いをし、小声で言った。


「あんまり騒がないでくれ。ただでさえ目立つんだからよ」


「えー、だってぇ」


「だってぇじゃない。おまえが魔王の娘と知られたら、さすがに面倒を見きれなくなるぞ」


「うぅー」


 不満そうに唇を尖らせるロニン。


 そう。

 村の英雄たるシュンと、ある日突然現れた謎の美少女ロニン。

 このコンビはいかにも目立つ。


 ただでさえ注目を浴びるのは嫌なのに、ロニンがぎゃーぎゃー騒いでいては世話がない。


「……ったくよ、めんどくせえ奴だな」


 シュンは盛大なため息をつくと、ためらいもなくロニンの手を取った。余計なところへ行かせないためだ。


「さ、行くぞ。引きこもりになりてえんだろが」


「あ……」


 ちょっぴり恥ずかしそうにしながら、シュンについていくロニンであった。


 それから数分後、さきほど村民に紹介されたレストランに到着した。


 レストランというよりは、ちょっと高級なパン屋だ。

 カウンターに多種多様なパンが並んでおり、精算を済ませてから食事をする店である。


「な……なにこれぇ」


 トレーの上に飾られるパンを見て、目をぱちくりさせるロニン。


 そりゃそうだとシュンは思った。

 彼女はモンスター。

 人間のつくった食べ物なぞ、知るよしもなかろう。


「お、お兄ちゃん。お、おすすめはなに?」


「わからん。俺に聞くな」


 シュンだって初めて来た店だ。おすすめなぞ知らない。


「う、うー」


 迷いながらも、ロニンはコッペパンを二つ選んだ。まあ無難な選択といえようか。


 シュンも適当なパンを見繕い、二人並んで精算をした。


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