表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/263

お手合わせ(意味深じゃないほう)

 秘密を暴露したことで、結果的には心の距離を縮めることに成功したようだ。心なしか、リュアの表情がほころんでいる。さっきまでのような堅苦しさはない。


 ――ああ、なんてピュアなんだ。

 リュアの純粋さに、トルフィンは舌を巻かずにはいられない。自分にもこのような時期があったのだろうか。


 そんなことを考えながら、トルフィンは好奇心のまま訊ねた。


「俺の秘密を教えた代わりに……教えてほしいことがある」

「へ?」

「君が昔、友達に嫌われるようになった理由さ。差し支えなければ教えてほしい」


 リュアが驚きに目を見開く。


「な、なんで、私の昔のこと知ってるの……?」

「あ」

 トルフィンは思わず素の声を出してしまった。


 そういえばそうだ。

 トルフィンはあくまでリュアの過去を《推測》していただけ。彼女自身からそれを告げられたわけではない。

 たいした推理をしたわけではないが、幼い子にとっては衝撃的だろう。


「さ、さっきも言ったろ。俺は六歳じゃないんだ。こういうのもわかっちまうんだよ」

「す、すごい、トルフィンくん……」


 リュアが尊敬の眼差しで見つめてくる。

 ――や、やめてくれ、そんなピュアな瞳で見ないでくれ。なんか心が痛い。

 トルフィンが自責の念に駆られていると、リュアは決意したように話し始めた。


「私のお父さん、《騎士団長》っていう仕事してるから……私も教えてもらってるの。剣の使い方を」

「へぇ」

「だから喧嘩したとき……私、思いっきり友達を怖い目に遭わせちゃって。お父さんと謝りにいったけど、もうみんな、怖がって近寄ってくれない……」


 ――な、なるほど。可愛い見た目に反してかなりお強いようだ。騎士長の娘というから、それも当たり前か。


 リュアが心配そうにちらちらと視線を向けてくる。


「トルフィンくん。やっぱり私のこと、嫌いにならない……?」

「何度も言わせるな。ならねえよ」

「よかった……」

「なら、一丁お手合わせといくか?」

「え?」

「軽く打ち合いをしてみようぜ。これから入学式だし、かるーくだけど」

「いいけど……大丈夫なの? 私、強いよ?」

「はは。大丈夫さ。俺だって強い」


 興味があった。

 シュンやロニンに《強い強い》と誉め称えられた自分は、実際どれくらい強いのか。当然、実践などしたことがないからわからないのだ。


 リュアはなおも悩んでいたようだが、遠慮がちに頷いた。


「わかった。ちょっとだけなら……」

「おう。そしたら木剣借りてくる。ちょっと待っててくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ