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バレないようにチラ見する方法があれば知りたい

 シュロン国第一王子。

 トルフィン。

 彼はその立場の偉大さを、改めて知ることとなった。


「あ、トルフィン様!」

「みんな、ロニン様とトルフィン様がいらっしゃったぞ!」


 シュロン学園の校門にて。

 ロニンとトルフィンを出迎えたのは、そんな歓声をあげる人間とモンスターたちだった。老若男女は関係なく、すべての国民たちが二人に駆け寄ってくる。


「あ、あはは……弱ったなぁ……」

 ひきつった笑いを浮かべるロニン。困っているようだ。

 こういう表情をしているときのロニンは素直に可愛い――とトルフィンはひそかに思った。


 前世ではトルフィンに近寄ろうともしなかった美女たちも、目を輝かせて歩み寄ってきた。あまりにすごい人数なので、トルフィンはどさくさに紛れていろんなところを触ってみたりした。


 それでも怪しまれる様子はない。子どもの特権である。


 ここにきて、トルフィンは父の偉大さを感じずにはいられない。国民にこれほど信頼されているとは。

 しかも、両者とも元々しがない引きこもり。パッとしなかった俺の前世と比べると、父はあまりにすごすぎる。


 などと考えていると。

 ふいに人垣がさくっと割れた。

 誰か、大物の人物がこちらに向かってきているようだ。さっきまでトルフィンに詰め寄っていた国民たちが、道を譲る形でどいている。


「おお、これはロニン婦人にトルフィン王子。ご機嫌いかがかな」

「あら、あなたは……えっと……そのう」

 突然現れた大柄の男に、困惑した表情を浮かべるロニン。

「はは。ゴルムと申します。婦人とは一度会ったきりなので、覚えていらっしゃらないのもやむなしでしょう」

「あ、ああ……。失礼しました。ゴルムさんでしたね」

 ほっと胸をなで下ろすロニン。


 この五年間でわかってきたが、彼女はあまり物覚えが良くないようだ。トルフィンでも《ゴルム》という名に覚えがある。


 現在、シュロン国の騎士団においてトップに立つ男――そう記憶している。聞く話によると、かつて父とも戦ったことがあるらしい。結果は父の圧勝に終わったようだが。


 ゴルムはトルフィンに目を向けると、深く礼をして言った。

「トルフィン王子。あなたも大きくなられた。数年前とは見違えますな」

「いえ、私も未熟な身。今後も学ぶべきことが多いです。いつかあなたに剣の手ほどきも受けてみたいと思っております」

「おお、これは……」


 ゴルムは驚愕に目を見開いた。


「とても六歳とは思えませんな。王子は大変成熟しておられる」

「はい……この子、子どもとは思えないくらいにしっかりしてて。時々、女性を見て不気味な笑いを浮かべるところがありますが」

「はっはっは! それは将来有望ですな!」

「……私は心配ですよ」

 大笑いをするゴルムに、ため息をつく母ロニン。

 トルフィンはといえば、ぎくりと心臓を高鳴らせているところだった。

 ――バレないようにチラ見してたはずなんだけどなぁ。やっぱ女はそこんとこ鋭いのな……

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