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五年前の約束を

 シュロン国の脅威は、全世界に広く知られることとなった。

 王都だけでなく、地方の街や村に住むすべての人間が、シュロン国の武力について認知した。これにより、シュンに攻め込もうとする勢力は潰え、シュロン国は真の平和を享受することになる。


 また、王が《死去》したクローディア王立首都は、セレスティアが後を受け持つこととなった。もともとエルノスの後継者がセレスティアしかいなかったため、これに抗議する者はほとんどいなかった。


 一方で、《エルノスを殺害したセレスティア》を見た騎士たちは抗議を行った。しかしながら、前王亡き後、エルノスの独裁っぷりが巷間こうかんに知られるや、彼らもおとなしくセレスティアに従うことになる。


 長きに渡る内部争いの果て、シュロン国と王都は同盟を結ぶこととなった。エルノスが企んでいた不平等条約とは違い、二国が対等な立場で結ばれる条約である。 


 これにより、シュロン国は更なる発展を遂げることができた。

 王都に存在する多くの魔術師や技術士がシュロン国に渡来し、さまざまな施設や民家を立ち上げていってくれた。いまやシュンは誰もが羨む巨大な王城に住み、国民らは屋根のある家で何不自由なく暮らすことが可能となった。


 一方で、これまで人間たちと敵対していたモンスターも、自由に王都を往来できるようになった。植物型モンスター《ネプト》を初め、モンスターたちは人間にはないさまざまな特性を活かし、人間たちに貢献した。


 人間とモンスターが真に共存する世界。

 数年前までは絵空事とすら思えた目標。


 だが、シュンとロニン、そしてセレスティアが協力することで、争いのない生活を実現することができた。


 それを称えて、人間やモンスターたちはシュンやロニン、セレスティアを、まるで神のごとく扱うようになる。誰もがシュンの言うことを聞くようになったのである。


    ★


 エルノスの死から五年後。

 シュンは二十四歳になっていた。ちなみにロニンは二十二歳、息子のトルフィンは五歳になった。


 シュンはふわーっと欠伸をし、ふかふかのベッドで寝返りを打つ。国王の寝室だけあって、豪勢なベッドである。夜にはロニンと熱い運動が繰り広げられる場所でもある。


 至高の瞬間である。

 国はこれ以上ないくらいに発展した。もはやシュンだけが走りまわる必要もない。つまり、こうして一日中寝ていることも日によっては可能なわけだ。しかも実家とは違い、最高の環境が整っている。


 ロニンはいま現在、トルフィンと散歩に出かけている。正直、ちっこいロニンが息子を抱き上げても母親には見えないが、それは言わない約束である。


 ーーコンコン。

 ふいにドアが叩かれた。


 メイドが昼食を持ってくるには早い。怪訝に思いながらも、シュンはズボンを穿き、ドアを開ける。


 セレスティアだった。淡い緑のドレスを身に包み、金色の髪をすらりと腰まで伸ばしている。対してシュンは、寝癖ボーボーの寝間着姿であった。


「あら、ごきげんよう」

「お、おまえ……!」

 シュンは目を見開いた。

「馬鹿野郎、来るならそう言えよ。なんも用意してねえぞ」

「別になにもなさらなくて結構よ。今日は個人的に会いに来ただけなの。五年前の約束を叶えるために」

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