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この気持ちは嘘じゃない

「で、出会えー! 者どもー!」

 騎士のひとりが我に返ったように叫び声をあげる。

「こやつはエルノス国王様を殺害した! いかに皇女様といえど許しておけぬ!」


 ーーきたか。

 セレスティアは油断なく構えながら、騎士たちの攻撃に備えた。


 エルノス国王とは違い、一般の騎士たちに私怨はない。できれば無駄な戦いは避けたいところだが、騎士たちは問答無用でセレスティアを取り囲んでくる。こちらがいかに言葉を尽くしても、おそらく聞く耳を持たないだろう。


「殺せ、殺せー!」

「出入り口は塞げ! 逃げ道をつくるな!」


 ーー戦うしかないか。

 このまま放っておけば、外からも援軍を呼び出されるだろう。そうなる前に決着をつけなければ……


「その心配はいらないよ」

 ふわり、と。

 空を舞うように、魔王ロニンがセレスティアの背後に着地した。どうやらここまで大ジャンプしてきたらしい。


「ロニンちゃん……どうするの?」

「ま、見ててよ」

 ロニンは片手を空に掲げ、はっ! と気合いを込めた。


 瞬間、セレスティアやロニン、騎士たちを丸ごと巨大な光が包み込んだ。視界が目映い輝きに覆い尽くされ、なにも見えなくなる。


「こ、これは……」

 セレスティアはひとり呟いた。

 この魔法には見覚えがあった。きっと、この場にいた全員をどこかに《ワープ》させたのだろう。

 数秒後、光が失せたときには、セレスティアたちはもう謁見の間にはいなかった。


「ここは、まさか……」

 知らず知らずのうちにひとりごちてしまう。

 いまは無人の魔王城、その城下町。

 そこに飛ばされていたのである。


「…………」

 セレスティアが呆気に取られていると、ふいに背後のロニンが言った。

「ねえ、セレスティア。二年半前のこと、覚えてる?」

「え? う、うん。人間とモンスターが戦争して、それをシュンが止めて……」

「そう。あのときもね、シュンさんは誰も殺してなかった。すっごい力で、一気に人間を無力化した」

「…………」


 あのときのことは嫌というほど覚えている。

 当時はいち学生に過ぎなかったシュンだが、彼はその圧倒的な力で人間軍を瞬時に屈服させた。あのときの衝撃はいまでも忘れられない。


「私はシュンさんみたいになれないかもしれないけれど……でも、尊敬してるの。彼を」

「そう……。好きなんだね」

「えっ? う、うん、まあ……そうだね」


 こんなときに頬を赤らめる魔王ロニンに、セレスティアは苦笑を禁じえなかった。

 だけどその気持ちもわかる。

 セレスティアも好きになってしまったのだ。彼の強さと、そして優しさに。

 その気持ちは決して嘘ではない。


 セレスティアは深く息を吸い込むと、気合いを込めて叫んだ。


「わかったわ。シュンみたいにうまくできるかわからないけど……死者を出さないように頑張りましょう!」

「ーーうん!」

 そうして、魔王と皇女の共闘が幕を開けた。


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