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堕落した国王

 ーー私は皇族だ。

 国民を平和に導く義務がある。

 私的な感情に振り回されてはいけない。

 エルノス父王が望んでいるのはたったひとつ。


 シュンの抹殺だけ。


 権力の分散を最も嫌う人だから。自分が一番偉くありたい人だから。


 シュンが《消えたあと》であれば、後のシュロン国はきっと父が統治してくれる。あるいは、私に統治の代行を任せてくれるかもしれない。


 シュン。

 彼さえ殺せば、世界は平和になる……


 夜。寝静まり返った客室。

 シュンもロニンも眠っている。

 そのなかにあって、セレスティアだけがゆっくりと、静かに起きあがった。


 引きこもりレベル999にして、最近は国王としてさらなる強さを手に入れたシュン。

 だが、寝ている姿は無防備なものだ。一気にこの隙を付けば、いくら彼だってーー


 胸が激しく高鳴る。

 自身の激しい息づかいが聞こえる。


 ーーごめん。シュン君。

 私を悪者と罵っても構わない。

 でも、こうするしか、もう方法はない。

 さよなら……私の尊敬する人。


 決意を固め、セレスティアが右手を掲げたーーその瞬間。


「殺るんなら、せめてロニンに当たらないようにしてくれよ」

「あ……」


 まさか気づいていたのか、シュンが静かに目を開いた。そのまま上半身を起こし、まっすぐにセレスティアを見据える。


「ご、ごめんなさい……これは……」

「わかってるさ。エルノスに頼まれたんだろ。大方、俺かシュロン国を天秤にかけられたんじゃねえの?」


 ーー鋭い。

 小国とはいえ、さすがは一国を束ねるだけはある。

 セレスティアが口ごもっていると、シュンは後頭部をかき、あーあと息を吐いた。


「でも、ま、おまえの思ってる通りかもしれねえな。俺さえいなくなりゃ、王都もシュロン国も平和になるのかもしれねえ。……はは、笑っちまうぜ」

「……シュン君、私は……」


 セレスティアが言いかけた、そのとき。


「危ねえ!」

 ふいにシュンがセレスティアのもとに飛び込んできた。

「えっ……?」

 シュンに抱き抱えられ、床をころころと転がり回る。その一瞬、セレスティアは視界の端に《あってはならない者》を捉えた。


 すなわち、エルノス国王から派遣された闖入ちんにゅう者ーー


 すっかり忘れていた。

 エルノス国王ほど用心深い人物が、二重の手を打たないわけがないのだ。


 すなわち、セレスティアを囮として、こっそり派遣した魔術師たちにシュンを暗殺させるーー


「お父様! あなたは、そこまで堕落して……!」


 セレスティアが叫んだ、その瞬間。

 シュンとセレスティアを、目映いばかりの光が包み込みーー 

 そして次の瞬間、セレスティアとシュンは見知らぬ場所にいた。

「ここ……どこ?」

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