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さすがは尊敬するお兄ちゃん

 オークによる村の襲撃。

 勇者との戦い。


 それらの出来事は、シュンにとって「めんどくせーこと」にすぎなかった。


 おまけにロニンというお荷物までついてきてしまった始末。


 引きこもり生活をエンジョイしたい彼にとって、それらは単なる厄介事でしかなかった。


 けれども。

 そのおかげで良かった点も二つあった。


 ひとつは、初めて自身の強さを認識できたこと。


 そしてもうひとつが、自分だけの家を与えられたことだ。


 ヒッキーな彼にとって、一番の問題は衣食住である。


 通常であれば、労働の対価として金をもらい、その金を払って衣食住を享受するものだ。


 しかしながらシュンは普通の人間ではない。

 親のスネをかじらなければ生きられない、ただのヒッキーである。


 当然、以前までは親によく叱責されていた。はやく働けだの、たまには外に出ろだの、うっとうしいことをよく言われたものである。

 いわゆる家のお邪魔虫だった。


 だが。

 今回の事件でそれが逆転した。

 シュンは村の英雄になった。


 彼がいなければ、村民は皆殺しにされていたからだ。


《勇者》アルスが助けにきていたとはいえ、勇者だけではきっと解決には導けなかった。村民を人質にされる計画があったから。


 シュンという不確定要素がいたからこそ、村民は誰ひとりとして死なずに生還できたのである。


 シュンがいたからみんな無事で済んだ。


 これを英雄と呼ばずしてなんと呼ぶ。


 名声には興味のないシュンであったが、おかげで専用の家をもらえた。しかも大量の食料と金までついてきた。


 これで当分、金には困らない生活ができるようになったのである。


 そしてそれは、シュンやロニンの、さらなる引きこもり生活を促すものでもあった。


    ★


「つ、辛い……」


 薄暗い室内で、ひとり、ロニンは呟いた。


 なーんにもすることがない。


 部屋にあるものは、ふかふかなベッドと円形テーブル、何冊かの本、衣類だけ。


 調度品の質は悪くないが、しかし、こんなものでは時間を潰せない。


 この引きこもり生活を始めて、すでに一週間。


 魔王城でもロニンは引きこもりのような生活をしていたが、まだ話し相手がいた。


 というより、仲の良いモンスターたちとずっと喋ったり遊んだりして毎日を過ごしていた。


 シュンいわく、「そんなものは引きこもりとはいえない」らしいが……


 ロニンは思わず息を呑んだ。

 シュンはまさか、こんなにも退屈な生活を何年にもわたって送ってきたというのか。私なら耐えられない。


 すごい。

 さすがは尊敬するお兄ちゃん……


 と、どこかずれた感情を抱くロニンであった。

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